超音波医学
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総説
呼吸器領域のPOCUS
関谷 充晃
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2023 年 50 巻 5 号 p. 347-353

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抄録

近年,呼吸器疾患の診断において,救急領域のPoint-of-Care 超音波(POCUS)の一環として肺エコーが普及しつつある.肺は空気を含み,かつ骨性胸郭に囲まれているため,様々なアーチファクトが観察される.肺エコーは実像のみならず,これらのアーチファクトを利用して診断するのが大きな特徴である.そのため,肺エコーはすべての呼吸器疾患に利用できるわけではなく,その適応となる疾患・病態についての理解が必要である.使用する探触子は,リニアプローブ,セクタプローブ,コンベックスプローブのいずれでもよい.POCUSでは主に前胸部を上下左右に8分割し観察する.健常者にみられる所見としてはBat sign,A-line,Lung sliding,Lung pulse,Seashore signがある.正常所見の消失は,呼吸器疾患の存在を示唆する重要な所見であるため,これらの正常像をしっかりと理解しておくことが重要である.肺エコーが診断に有用な代表的な呼吸器疾患としては,気胸,間質性肺炎,肺炎などがある.各疾患において認められる主な異常所見としては,気胸におけるlung point,間質性肺炎にみられるmultiple B-lines,肺炎にみられるsonographic consolidationなどがある.対象患者にみられる異常所見,正常所見の欠如などを組み合わせて,可能性の高い鑑別疾患を絞っていく.

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© 2023 公益社団法人 日本超音波医学会
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