2023 年 50 巻 5 号 p. 339-346
頭頸部領域の超音波検査を施行するにあたり,しばしば判断に迷うものとして嚢胞性疾患あるいは気管周囲における腫瘤性病変がある.嚢胞性疾患では先天性嚢胞性腫瘤や結核などがある.注意が必要なのは甲状腺乳頭癌やヒトパピローマウイルス関連中咽頭癌のリンパ節転移である.好発年齢や治療法が異なるため,適切な診断と対応が必要となる.それぞれの疾患の特徴や鑑別に必要な検査について述べた.気管周囲における腫瘤性病変では甲状腺腫瘍,副甲状腺腫瘍,気管傍リンパ節転移や神経鞘腫といった多彩な疾患が挙げられる.狭い領域に多くの構造物が密集しているため,超音波検査のみでは鑑別が難しいことも多い.臨床所見,画像検査,病理学的検査を含め総合的に判断する必要がある.頭頸部癌根治治療の1つである化学放射線療法は近年増加傾向である.化学放射線療法後の頸部リンパ節転移における治療効果判定にも超音波検査は有用である.治療後の変性は8~16週かけて徐々におこるため,経時的な観察が重要である.治療後の変化として,リンパ節サイズの縮小,エコー輝度の変化,液体成分・血流シグナルの消失が観察される.CTやMRIではリンパ節内の詳細な観察は困難である.超音波検査では,Bモード,カラードプラ,エラストグラフィを用いてリンパ節内の質的変化を観察できる.他の画像検査と併用することで,より精度の高い治療効果判定を行うことができると考える.