超音波医学
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精巣腫瘍と紛らわしい超音波所見を呈した結核性肉芽腫性精巣上体精巣炎の1例
成田 啓一金田 智陣崎 雅弘
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: JJMU.A.85

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抄録
症例は72歳男性で,1ヵ月前より陰嚢の無痛性腫大を自覚した.陰嚢超音波検査で右精巣上体頭部が腫大し不均一な低エコーを呈していた.低エコー域は右精巣に連続しており,精巣上体との境界が不明瞭であった.また,陰嚢内には結節状の低エコー域を散見した.中等量の陰嚢水腫,軽度の白膜肥厚や陰嚢壁の浮腫を伴っていた.カラードプラ上は精巣上体の辺縁にのみ血流信号を認めた.右精巣腫瘍を疑って,右高位精巣摘除術を実施した.病理組織診断で,膿瘍を伴う肉芽腫形成や炎症細胞浸潤を認めた.中心壊死やラングハンス巨細胞も見られたため,Ziehl-Neelsen染色を実施したが抗酸菌は検出できなかった.結核の既往歴はなく,術後の喀痰・尿培養検査ともに結核菌は検出されなかったが,インターフェロンγ放出試験陽性や胸部CTで陳旧性結核性胸膜炎を示唆する所見があり,最終的に結核性肉芽腫性精巣上体精巣炎と診断した.肉芽腫性精巣上体精巣炎と精巣腫瘍の鑑別は困難とされているが,自験例のように精巣上体の腫大や精巣内部に複数の低エコー結節,血流信号が辺縁のみで内部では乏しいことが診断に有用と考えられた.腫瘍よりも炎症性疾患を示唆する所見として,陰嚢壁肥厚,白膜肥厚,陰嚢水腫も参考になる.
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© 2017 一般社団法人 日本超音波医学会
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