本研究は、整形外科の臨床場面で個人に委ねられている身体抑制を開始する際の判断基準の曖昧性を改善し、不必要な身体抑制をなくす対応を検討する際の基礎データを得るため、整形外科疾患をもつ高齢者に看護師が身体抑制を開始する際にどのような要件を判断材料としているのかを明らかにすることを目的とする。研究方法は、整形外科病棟に勤務している看護師に、無記名自記式質問紙調査による横断調査を実施した。身体抑制を行う際の悩みの程度で「高悩む群」と「低悩む群」に分類し、Mann–Whitney U検定で2群比較を行った。身体抑制の判断要件は「点滴・ドレーン類を自己抜去する」「ベッドから転落する」「尿留置カテーテルを自己抜去する」であった。「低悩む群」は、予防的に身体抑制を行う傾向にあった。点滴やドレーン類、尿留置カテーテルを早期に抜去し、せん妄や転倒転落ガイドラインでアセスメントを強化することが、身体抑制をなくす対応につながると示唆された。