2017 年 9 巻 1 号 p. 38-44
本研究の目的は、東日本大震災後に派遣された災害支援ナースが支援活動時に感じた倫理課題を明らかにし、事前準備について考察することである。各都道府県看護協会から派遣された支援ナース850名を対象に2014年1月に自記式質問紙調査を実施した。返信346通中、倫理課題を記載していた201名の記述259個を帰納的に分析し、「平常時とは異なる看護実践への葛藤」「平常時なら可能な治療やケアの提供不能」「プライバシーの尊重が困難」「感染予防対策の実施困難」「資源配分・物資配布方法の未整備」「被災地における格差」「派遣元の求めに応じることの苦しさ」「派遣元の方針が不透明」などの16カテゴリに分類できた。支援ナースへの派遣前の準備として被災地の環境や自己完結型支援の特徴、他支援者との連携も含む実践がイメージできる研修、活動終了後のフォローアップなどにより、支援活動における葛藤や戸惑いを減らせる可能性が示唆された。