2023 年 31 巻 2 号 p. 89-93
現在我が国における障害者雇用率は障害者数の実態を反映し上昇傾向である.また,精神障害においては障害を有する者の就職率は高いとは言えない状況である.このような中,障害を持つ方への合理的配慮は大変重要である.配慮を検討するに先立ち,医療機関で必要な支援,職場で必要な支援を明確にする必要がある.そのためには,社内の関係者が関わる場面では疾病性(疾患によりもたらされる諸症状),事例性(症状により引き起こされる職場での問題)をしっかりと確認することが望まれる.また,産業医の視点から考察すると,企業,従業員,医療機関にもそれぞれ課題があるものと思われる.業種,業態,企業や事業場の規模に応じて提供できる内容に違いはあり,課題も多いが,合理的配慮の成功例,問題例を産業保健職間の研究会などを通じて共有していくことも精神障害を持つ方の社会復帰の可能性を高めていくことにつながるものと考える.