2023 年 31 巻 4 号 p. 175-183
2000年代一貫して障害者の雇用は量的に拡大を遂げた.福祉サービスを利用する就労についても利用者は増加しており,年間約2万人の障害のある人が福祉サービスから企業等での雇用に移行している.一方で障害者法定雇用率を達成した企業の割合は5割に満たないこと,障害者雇用の進展には企業規模による差が生じていること,精神障害のある人については勤続年数が他の障害種別より短い傾向にあるなどの課題がある.就労系福祉サービスも経営上の課題が顕在化してきており,これら雇用政策と福祉政策の課題に対応すべく障害者雇用促進法と障害者総合支援法の改正が行われた.法改正を踏まえ精神障害のある人の雇用の新たな動きに注目し,精神障害のある人をより基幹的な業務を担う人材として採用に取り組む企業が出始めている.そうした企業で重視されている能力開発とキャリア形成について検討し,今後の障害者雇用と就労を展望する.