産業精神保健
Online ISSN : 2758-1101
Print ISSN : 1340-2862
31 巻, 4 号
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特集 ディーセント・ワークを実現するための精神障害者への就労支援
  • 吉田 麻美, 三木 明子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 167-169
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス
  • 氏田 由可
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 170-174
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    国際労働機関(ILO)は国連専門機関として全ての人にディーセント・ワーク「働きがいのある人間らしい仕事,より具体的には,自由,公平,安全と人間としての尊厳を条件とした,全ての人のための生産的な仕事」を実現するために活動している.しかしながら世界中の多くの人々は,失業,不完全就業,質の低い非生産的な仕事,危険な仕事と不安定な所得,権利が認められていない仕事,男女不平等,移民労働者の搾取,発言権の欠如,病気・障害・高齢に対する不十分な保護など「ディーセント・ワークの欠如」に直面している.精神障害者を含めた障害者は特にそのリスクが高い.ILOは国際労働基準をはじめとする様々なツールを開発・普及するとともに,政労使それぞれの,あるいは協同した活動を通して,障害者のディーセント・ワークを達成・推進する各国の取り組みを支援している.

  • ―求められる能力開発による活躍推進―
    眞保 智子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 175-183
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2000年代一貫して障害者の雇用は量的に拡大を遂げた.福祉サービスを利用する就労についても利用者は増加しており,年間約2万人の障害のある人が福祉サービスから企業等での雇用に移行している.一方で障害者法定雇用率を達成した企業の割合は5割に満たないこと,障害者雇用の進展には企業規模による差が生じていること,精神障害のある人については勤続年数が他の障害種別より短い傾向にあるなどの課題がある.就労系福祉サービスも経営上の課題が顕在化してきており,これら雇用政策と福祉政策の課題に対応すべく障害者雇用促進法と障害者総合支援法の改正が行われた.法改正を踏まえ精神障害のある人の雇用の新たな動きに注目し,精神障害のある人をより基幹的な業務を担う人材として採用に取り組む企業が出始めている.そうした企業で重視されている能力開発とキャリア形成について検討し,今後の障害者雇用と就労を展望する.

  • 野﨑 智仁
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 184-188
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    精神障害者の雇用者数は,他の障害種と比較しても増加傾向ではあるが,離職率の高さが報告されており,就職後の職場適応支援が重要である.ジョブコーチとは職場適応援助者とも言い,実際の職場で働く障害者(特に重度障害者)を直接的・間接的・継続的に援助する.基本的には実際の職場で,障害者にわかりやすい作業手順を示し,他の職場仲間との作業や人間関係を調整し,本人の職場適応と就労自立を必要なだけ支援し,職場仲間による自然な形の支援「ナチュラルサポート」へ展開する役割を担っている.精神障害者へのジョブコーチ支援では,疾病性にも配慮しつつ個別性へ配慮した支援が重要である.これは個人の特性に留まらず,精神障害者を取り巻く環境因子についても同様であり,細やかな支援の実践が求められる.精神障害者のリカバリーを実現し,社会の発展のためにも,ジョブコーチの更なる活躍に期待したい.

  • 中原 さとみ
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 189-194
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    2023年4月G7の労働雇用大臣会合での共同声明において,働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)を推進することが示されている.一方でIPS援助付き雇用がエビデンスに基づく援助付き雇用として過去30年で国際的に広がり,現在,世界20か国で利用できる.本稿では,このIPS援助付き雇用の概要とともにディーセント・ワークを目指してIPSではどのように取り組んでいるのか紹介する.厚生労働省の患者調査によれば精神疾患を有する総患者数の増加が示されている中で新たな地域ケアとして新設された療養生活継続支援加算等が拡充しIPSが制度化され働きたい方がどこで暮らしていても利用できるようになれば,産業精神保健の分野においてもこの恩恵を受ける人は計り知れないだろう.多くの国で政策立案者等がIPSへの介入が価値ある投資とされているように,日本においてもディーセント・ワークを実現する方法としてIPSが採用されていくことを期待したい.

  • 諏訪 裕子
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 195-199
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    障害者雇用では多くの企業でトップからの方向性や目指す姿が明確でなく,採用・定着・育成の仕組みづくりも難しい.特に,精神障害者は個人差が大きく,職場側も対応できること/できないことがわかりにくい.また,公的制度・福祉サービスは本人支援を主軸としており,雇用する側の企業への支援は十分でない.このような課題を解決するためには,障害/疾病に関する専門知識や心理面接のスキルを持った心理専門職による外部支援が有効である.採用施策では,選考ミスマッチを軽減するために,障害や疾病に関する情報を十分に活用し,見極めの精度を上げることが大切であり,面接官をサポートすることで,適切な判断を促すことができる.定着施策では,トラブルが起こる前に課題を早期に把握し,本人支援と職場支援を行うことが大切であり,職場に対して障害者への配慮や指導方法をアドバイスすることで,トラブル未然予防の対策を行うことができる.

  • ―特性・強みを活かしたキャリア構築の事例から―
    鈴木 慶太
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 200-204
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    Kaienは,発達障害の人が強み・特性を活かした仕事に就き,活躍することを応援している.発達障害をはじめとした就労支援で大事なのはまず支援者と当事者家族のディーセント・ワーク実現だ.これらの礎があったうえで当事者支援が成り立つからである.発達障害当事者のディーセント・ワークには,強みを活かす視点が重要だ.強みとは他者との比較優位性ではなく,自分自身の中で感じる得意な特徴と捉えたほうが良い.例えば,安定した勤怠を実現できる人,発想のユニークさのある人などがディーセント・ワークにつながる場合が多い.自らの強みに気づくには,安心できる環境や他者の評価,良質な失敗を経験することが重要だと代表として考えている.

  • 脊尾 大雅
    原稿種別: 特集
    2023 年 31 巻 4 号 p. 205-208
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    中小企業における障害者雇用は現在も模索中ながらも,多くのグッドプラクティスを生み出してきた.特に新型コロナウイルスが世界にまん延して以降は,働き方の多様性は広がり一般的な働き方として認知されるようになった.多様性が尊重される時代の中で,それを受け止めるだけの個人や企業がどの程度存在するかはわからないが,時代の流れからはより多様性を肯定する職場を創ることが重要になるであろう.そのため本稿では企業が目先の利益ではなく未来への投資として障害者雇用を捉えている事例として紹介する.

文献レビュー
  • 松崎 淳人
    原稿種別: 文献レビュー
    2023 年 31 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 2023/11/20
    公開日: 2023/11/20
    ジャーナル オープンアクセス

    コロナウイルス感染症も5類となり,今後ますます本邦の外国人医療の受療は増すことが強く予想されている.よって本邦の外国人医療に関する現状と課題について,産業と精神医学の視点を加え文献レビュー形式に準じて概説した.外国人の動向として,特に通訳者が得られにくい地方で技能実習生など日本語も英語もうまく話せない外国人の受療に課題があることなどを紹介し,医療機関,地域,自治体などの対応すべき組織毎の外国人医療への課題の取り組み状況をまとめた.また医療通訳者が抱える課題として,その育成や資質問題,アドボケイト(擁護者)対応,サイト・トランスレーション問題(同意書)などの課題を取り上げ,更には近年のIT技術の高度化による医療通訳システムの進歩を概説した.

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