抄録
症例は初診時2歳の重症再生不良性貧血, HLA一致の7歳姉をドナーとして, 拒絶後の2nd BMTで生着を得た.急性GVHDとして皮膚症状とともに結膜炎症状がみられた.day538に慢性GVHDに対するprednisoneの投与を終了したところ, 以後しだいに労作性の咳嗽を反復するようになった.咳嗽に対しては抗生物質や気管支拡張剤は無効であった.99m Tc-MAAシンチ, 81mKrシンチで異常がみられた.さらに乾燥性角膜炎 (KCS) と鼻涙管閉塞に伴う慢性涙嚢炎も認められた.methylprednisoloneによるパルス療法から始まるprednisoneの投与が奏効し, 咳嗽の反復はすみやかに軽快した.呼吸機能検査では残気率の増大, 1秒率の低下といった, 閉塞性の換気障害が認められているものの, “qualityof life” は著しく向上した.慢性GVHDの肺症状に対してはすみやかな臨床診断とprednisoneを中心とする免疫抑制剤の投与が重要と思われた.