本稿では医学教育を1つの事例としながら,専門分野レベルのInstitutional Research(IR)の役割と機能について考察し,機関レベルのIRとの関連性を含め,今後の方向性について検討する.
具体的には,まず現在なぜ専門分野レベルのIRが注目されているかの背景について,内部質保証の強調,教育プログラムの第一義的重要性,分野別評価の導入と進展,機関別認証評価の軽量化の観点から整理する.次いで,事例としての医学教育におけるIRの展開について概観した上で,IRの形態の多様性について確認する.その上で,IRの具体的な機能に関連して,日本のIRに関する制約とその現状を指摘した上で,学修成果の測定や可視化に関する議論を確認しつつ,実践の在り方について論じる.最後に,専門分野レベルのIR機能の重要性を指摘するとともに,具体的な課題とともにその方向性を考察する.