2025 年 9 巻 論文ID: e09018
社会には感情に関する細やかな規則があり,われわれはそうした感情規則に従って感情を管理しながら日常生活の秩序を維持している.こうした感情管理が職業的に求められる仕事を,社会学者のHochschildは,感情労働と呼んだ.この感情労働という概念は,看護の領域で大きな関心を集め,その後,医師の仕事も感情労働としての側面を有することが明らかにされていく.対人関係の重要性が増す薬剤師の仕事においても,今後感情労働の比重が高まることが予想される.医療者教育課程においては,隠れたカリキュラムを通じて感情の社会化が行われるが,これまでは感情抑制に重点が置かれてきたために,医療における感情の存在が軽視される傾向にあった.本稿では,新しい医療者像という観点から,これからの医療者教育課程における感情の位置づけについて若干の問題提起を行う.