2024 年 13 巻 3 号 p. 196-204
目的:境界知能を持つ当事者の日常生活場面での体験や認知の特徴を明らかにすること.
方法:境界知能を持つ当事者4名を対象とし,インタビューガイドを用いた半構造化面接を行い,目的に沿って質的記述的分析を行った.
結果:概念的領域では〈年齢相応の学習内容を理解できず勉強ができなかった体験〉など計2カテゴリー,社会的領域では〈他者の言動・思考の意味・理由が分からず対人関係・社会行動に困難があった体験〉など計5カテゴリー,実用的領域では〈療育手帳は境界知能でも生きていくうえで必要なものであるという判断〉など計3カテゴリーが生成された.
考察:境界知能を持つ当事者は知的機能等の脆弱さや境界知能の不可視性が影響し,周りから普通の人と扱われる体験や,そこから自己評価の低下や対人関係の問題を体験・認知しやすい対象であることが示唆された.