日本公衆衛生看護学会誌
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研究
東日本大震災による津波被災半年後に自治体職員が語った有事の業務と思い
~遺体対応に焦点をあてて~
岡本 玲子岩本 里織西田 真寿美小出 恵子生田 由加利田中 美帆野村 美千江城島 哲子酒井 陽子草野 恵美子野村(齋藤) 美紀鈴木 るり子岸 恵美子寺本 千恵村嶋 幸代
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キーワード: 津波, 遺体対応, 公務員
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2016 年 5 巻 1 号 p. 47-56

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抄録
【目的】本研究の目的は,東日本大震災で津波災害を受けた自治体の職員が,震災半年後に印象に残ったこととして自発的に語った遺体対応業務とそれに対する思いを質的記述的に解釈することである.
【方法】対象は一自治体の職員23名であり,個別面接により被災直後からの状況と印象に残ったことについて聴取した.
【結果】自治体職員として行った有事の業務に関する262のデータセットのうち遺体対応に関するものはわずか21であった.遺体対応業務には,震災後,直後からの遺体搬送,約2か月間の遺体安置所,約3か月間の埋火葬に係る業務があった.それぞれの業務に対する職員の思いは,順に,「思い出せない,どうしようもない」,「精神的にやられた,つらい」,「機能マヒによる困惑」が挙がった.
【考察】避難所と物資の業務については,創意工夫や今後の展望などが具体的に語られたのに比べ,遺体対応については非常に断片的であり,話すことにためらいが見られた.遺体対応業務は通常業務とは全く異質なものであり,準備性もないまま遂行した過酷なものであった.我々は有事に起こるこのような状況について理解し,今後に備える必要がある.
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© 2016 日本公衆衛生看護学会
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