日本植物病理学会報
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日本におけるトマト潰瘍病
2. トマト潰瘍病菌に寄主特異的なバクテリオファージの性質
脇本 哲植松 勉水上 武幸
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1969 年 35 巻 3 号 p. 168-173

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抄録
トマト潰瘍病菌を侵す2種類のファージを分離し,一方をMiP1,他方をMiP1hと命名した。MiP1ファージは長野県松本市の罹病トマトの茎から分離したものであり,MiP1hファージは実験中にMiP1の突然変異体として得られたものである。MiP1ファージはトマト潰瘍病菌の16分離株のうち7菌株を侵すことができないが,MiP1hファージはこれらのすべての菌株を侵すことができ,寄主範囲において明らかな差異が認められる。両ファージともトマト潰瘍病菌以外の使用した植物病原菌には寄生性は認められなかった。
これらのファージは溶菌斑を形成するためには指示菌浮遊液の濃度と潜伏期間の温度について限られた条件が必要である。溶菌斑計数を正確に行なうためには,指示菌液の菌濃度を2.7×107-4.4×108/mlにすることが必要であり,また,ファージ,指示菌液および培地を混合して流し込んだ平板は21-23℃に保たなければならない。条件がこれらの範囲外にある場合には,溶菌斑は現われないか,あるいは現われても不明瞭となり,溶菌斑数は減少する。
両ファージは形態的および血清学的には全く同一であり,直径70mμの頭部と長さ160mμ,幅20mμの尾部とから成っている。共に45℃以上の温度で徐々に不活性化され,55℃以上10分間の処理で完全に不活性化される。
22℃で行なった一段増殖実験の結果から,これらのファージの潜伏期間は240分であり,同一菌株に感染した場合の平均ファージ放出量はMiP1hよりもMiP1ファージの方が大であることが示された。
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