抄録
(1) イネ白葉枯病防除剤フェナジン-5N-モノオキシドによるイネ葉の光合成的酸素発生および呼吸に対する影響をポーラログラフィ法により調べた。
(2) フェナジン-5N-モノオキシドは本病病原細菌の生育半阻害濃度(0.39μg/ml)以上の濃度(2.5μg/ml)でイネ全葉の光合成的酸素発生反応ならびに呼吸には影響を認めなかった。
(3) フェナジン-5N-モノオキシドは本病をほぼ完全に防除しうる濃度(200ppm)散布後のイネ全葉に対しても影響を認めない。さらにこの場合,葉を薄い切片として測定するとフェナジン(母核)では光合成的酸素発生反応に明らかな阻害が見られたが,フェナジン-5N-モノオキシドではほとんど影響が見られない。イネ白枯病菌で認められたフェナジン-5N-モノオキシドのN-オキシドの還元的開裂反応(既報)はイネ葉組織切片では認めがたかった。
(4) 散布されたフェナジン-5N-モノオキシドは葉上において単なる光化学反応によりしだいに未同定の生物活性の減じた光分解物に変化する。
(5) 未知光分解物UP-1はm.p. 131°C.分子式C12H8N2O,分子量197。フェナジン-5N-モノオキシドの1異性体とみられる。