日本植物病理学会報
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リンゴ腐らん病菌,Valsa ceratospermaの子のう胞子の分散様式
斎藤 泉田村 修高桑 亮
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1972 年 38 巻 5 号 p. 367-374

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抄録

1. 子のう胞子の放出は子座を形成している罹病リンゴ樹皮に直接,充分な水を与えた場合にのみ認められた。乾燥した樹皮を湿室に保っても放出は起きず,子のう殻開口部に子のう塊が形成された。
2. 野外における空中飛散胞子および雨水等によって流動する胞子はともに3月中旬ですでに認められ,7月上旬に終息した。
3. 温度は10∼25°Cで子のう胞子放出にほとんど影響を与えなかった。3°Cでは射出の開始がおくれ,飛散胞子量も少なかった反面,放出は持続的に行なわれた。
4. 子のう胞子放出中に樹皮表面を水でぬらすと,その直後に飛散胞子量の一時的な増加がみられた。
5. 子のう胞子を水平に放出させ,その飛散距離をみると最長飛散距離は約6mm,平均飛散距離は2.8mmであった。子座を形成している樹皮試料のスライドガラス面に対する高さを増しても飛散距離はさほど延長されなかった。
6. 子のう胞子は一団となって放出される。その子のう胞子塊中の胞子数と飛散距離との間には密接な関係がみられ,胞子数が多いほど飛散距離は大であった。
7. 1個の子座から放出される子のう胞子数は1時間当たり1,120∼8,662個であった。

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