日本植物病理学会報
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日本に分布するXanthomonas citriのCP1およびCP2ファージ感受性
小畑 琢志
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1974 年 40 巻 1 号 p. 6-13

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抄録
輸出みかんの主要産地(アメリカ向けに設定されたかいよう病無病地区を除く)から多数のX. citri菌株を採集し,CP1およびCP2ファージに対する感受性からみた菌系の分布実態および両ファージの溶菌範囲を検討した。
静岡・和歌山・広島・徳島・愛媛各県の全域におよぶ採集の結果,菌系の地域分布は,広島県にのみCP1感受性菌系が多かったほかは,いずれの県においてもCP2感受性菌系が優勢であった。しかし菌系の分布は品種によって特徴があり,温州にはCP2感受性菌系が優位を占めるのに対し,温州以外の品種から採集した菌株には両菌系が種々の比率で検出された。CP1感受性菌が広く分布する広島県にあっても,温州単植園の多くはCP2感受性の菌系が優勢であった。この調査において検定した計1256菌株のうち,両ファージ耐性菌は17菌株(1.4%)であった。耐性菌の検出頻度は低いだけではなく,これが特定の地域や圃場に局在して分布する兆候も認められなかった。
菌系の微視的な所在様式を推定するため,愛媛・静岡両県下において数圃場を選び,局部的に多数の単個病斑から菌株の分離をおこなって調べた結果,既知の菌系のほか,両ファージのいずれにも感受性をもった菌系が一部に検出された。ひとつの圃場に複数の菌系が混在する場合,その混在は病葉レベルまではしばしば認められるが,ひとつの病斑を構成する菌系は単一であることが多かった。この調査で検定した計2514菌株中には耐性菌は存在しなかった。
以上の結果からCP1およびCP2の両ファージを組合わせた溶菌範囲は,日本の輸出みかん関係地域に分布するX. citriのほとんど全部を包含するものと考える。
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