日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
キュウリモザイクウイルスに感染したササゲ葉に形成される壊死斑部の細胞に認められる膜集合体
江原 淑夫
著者情報
ジャーナル フリー

1979 年 45 巻 1 号 p. 17-24

詳細
抄録
キュウリモザイクウイルス(CMV)に感染したササゲ(品種黒種三尺)の壊死斑部およびその周辺の細胞に複雑な構造の膜集合体が電子顕微鏡下で観察される。これらの構造体について健全細胞に見出される類似のものと比較し,その機能について推察した。この構造体は健全植物では篩管細胞や表皮細胞の液胞中に多く認められるが,小型で複雑な構造をもたない。CMVに感染し壊死する細胞中では細胞壁と細胞質の間に主に管状の膜集合体が認められ,完全に壊死したものでは細胞壁近辺の電子密度の低い個所に,これらの膜集合体の残骸とみられるものが認められる。壊死細胞に隣接した細胞では大型化し,内部は管状膜構造体が複雑に絡み合い,液胞部に突出しているものがしばしば認められた。この膜構造体の分布,位置と構造的変化から,これらは吸収・排泄や,液胞と細胞外との連絡などの機能を持つものと思われる。この構造体は細胞質膜のinvaginationによって形成されるものと見られる。
著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top