抄録
1. 1978年から1980年にかけて,宇都宮市内の水田においてイネ体上に偽子のう殻と分生子殻を認め,その分類上の所属と病原性について検討した。
2. 偽子のう殻は大型長菱形のいもち病斑中央の淡褐色部に,分生子殻は穂枯れ部や葉の灰色部に,小黒点として認められた。
3. 偽子のう殻は半埋没性で偏球形,径100∼120μmで黒褐色。子のうは有柄,円筒形,二重壁で側糸を有する。子のう胞子は淡黄色,紡錘形,約20×5μmで3隔膜を有する。
4. 分生子殻は半埋没性で球形,径約150μmで黒褐色。分生子はやや曲がった棒状,無色,約25×3μmで隔膜は通常3である。分生子は単生・出芽式に形成される。
5. いもち病斑上に認められた菌はLeptosphaeria oryzaecola Hara,穂枯れ部および葉の灰白変色部に認められた菌はSeptoria oryzae Cattaneoと同定された。
6. 両菌は菌そうの性状が等しく,ともに培地上に同様の子のう胞子と分生子を形成したことから,同根である。
7. 両菌は菌糸接種の結果,イネの葉および穎に病原性を示すことが確認された。