日本植物病理学会報
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ニトロソグアニジン処理で誘発されたイネ白葉枯病菌変異株の血清学的性質
土屋 健一崔 在乙T.W. MEW脇本 哲
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1982 年 48 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

血清型の異なるイネ白葉枯病菌Q7472(血清型A), Q7502(同B-1)およびN5837(同B-II)の抗血清を用い,ともにファージ感受性で病原型の異なる同病菌PXO61およびPXO63-6の2野生型菌株,およびそれらに由来する親株,さらにニトロソグアニジン処理により誘発された種々の表現型をもつ変異株を含む計18菌株の血清学的性質を寒天ゲル内拡散法によって比較した。その結果,両親株および大部分の変異株は抗Q7472血清と1本の共通な沈降帯を形成し,血清型はAであった。PXO63-6に由来する変異株のうちファージ耐性に変異した2菌株は抗Q7472血清以外の両血清とのみ反応し,抗原性も変異していることが認められ,さらに自己凝集反応および熱処理抗原による実験結果から,両変異株の血清型はB-II型であることが明らかになった。一方,PXO61菌株の場合には親株から誘発した非病原性株からさらに病原性復帰変異株が得られたが,血清型Bへの変異は認められなかった。しかし,それぞれの菌株を超音波処理した抗原と抗PXO63-6(超音波処理)血清または抗N5837血清とを反応させると病原性復帰変異株は他の2者よりも沈降帯が1本少なく区別可能であった。また,各変異株から分離された粘液層および菌体多糖質の各抗血清に対する反応は菌株の血清型に一致した。

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