抄録
4年生クロマツの主軸にマツノザイセンチュウを接種し,枯損過程におけるクロマツ組織の脂質過酸化の程度の変化および活性酸素の消去に関与する酵素の活性の変化を当年生枝について調べた。脂質過酸化の指標であるマロンジアルデヒド(MDA)濃度は樹皮,木部共,接種後次第に増大した後,枯死に伴い低下した。MDA濃度の増大は解剖観察でみた組織の破壊,変性の大きさおよび線虫の増殖と対応していた。可溶性タンパク質含量および樹皮のペルオキシダーゼ活性はMDA濃度と似た変化を示したが,木部のペルオキシダーゼ活性は樹皮のそれよりも早く増大した。木部のスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)活性は接種後4週間目から低下し,木部のカタラーゼ活性は接種後次第に低下した。樹皮にはSOD活性は殆ど,またカタラーゼ活性はまったく認められなかった。材線虫病の進展の過程に膜の損傷-脂質過酸化-が含まれることが示唆される。