日本植物病理学会報
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稻熱病菌各種培養系統の病原性竝に稻の品種と發病程度との關係に就きて
安部 卓爾
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1936 年 6 巻 1 号 p. 15-26

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抄録

1. 本報告に於ては稻熱病菌各種培養系統の病原性竝に稻の品種と發病程度との關係に就きて,穗孕期の成稻葉及稻穗頸に對し,稻熱病菌培養系統9種を用ひて行ひたる接種試驗の結果を記述せり。
2. 穗孕期の成稻葉に對する供試稻熱病菌各培養系統の病原性は稻苗に對するものに比し著しく低きも,各培養系統間には明かなる病原性の分化を認め得たり。培養系統XIII, XII, IXは病原性最も強く, XXIIは中間に位し, XX及XVIIIは弱き方にして, Vは最も弱し。又培養系統VII及XVIIは全實驗を通じて全然感染したることなく,斯かる成稻葉に對しては病原性を有せざるものの如し。
3. 稻穗頸に對し病原性最強なるは培養系統IXにして, XIII, XII, XXIIの3系順次これに次ぎ, XX及XVIIIは中位にしてVは弱く, VII, XVIIは最も弱くして,成稻葉に對する接種試驗と同一結果を得たり。即ち稻穗頸に對して示す各培養系統の病原性にも亦,明かなる分化現象を認め得るものの如し。
4. 山形,長野,岡山,福岡4縣産の稻16品種の穗頸に對して,培養系統V, IX, XVIIIの3菌を用ひて行ひたる接種試驗によるに,何れの品種に對しても例外なくIXが常に最大の病原性を示し, V及XVIIIは兩者の病原性に大差を認めざるも,大體に於てXVIIIの方稍々強し。
5. 上記4縣産の稻數品種宛に就きて稻熱病菌培養系統IXに對する抵抗性の程度を比較したるに,イ號(山形縣),坊主玉川,無芒愛國(長野縣),龜治三號(岡山縣),愛國(福岡縣)の5品種は最大の抵抗性を示し,早生大野(山形縣),畿内早生六八號,同六九號(長野縣),光明綿(岡山縣)の4品種は抵抗性最も弱く,豐國,東郷(山形縣),畿内早生二二號(長野縣)の3品種はこれ等2群の中間の抵抗性を示せり。

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