抄録
キュウリモザイクウイルス(CMV)のコートタンパク(CP)とサテライトRNAを両方発現する形質転換タバコは,各々の遺伝子を別々に発現する個体よりも優れたCMV抵抗性を示す。この拡大された抵抗性のメカニズムを解明するために,サテライトRNAのCMVの感染率に及ぼす効果について解析した。2μg/mlのCMV濃度では顕著な感染阻止効果が認められなかったが,0.5μg/ml以下の低濃度でCMVを接種した場合に,サテライトRNA発現タバコで感染阻止効果が見いだされ,接種葉におけるCMVの感染点が減少した。このような感染阻止は,コートタンパクを発現するタバコで観察される抵抗性に類似した現象である。このサテライトRNAによる感染阻止効果は,CPとサテライトRNAを両方発現する個体で観察された強いCMV抵抗性の1要因になっているものと思われる。