抄録
現在,腎疾患患児や検尿異常児に対しては,日本学校保健会の学校生活管理指導表を目安に運動制限や生活制限が行われている。今回われわれは,IgA腎症の患者に対して運動制限を行うことの意義を運動負荷前後の尿蛋白量の変化や起床時と就寝時のクレアチニンクリアランス (以下,Ccr) の変化を指標として検討した。その結果,京都市学校医会の腎臓病相談事業に参加した延べ38名を対象とした運動負荷試験では,早朝尿蛋白/クレアチニン比 (以下,尿TP/Cr) が0.10以上の患児のみ,運動負荷後に尿蛋白量が増加した。また,当院に腎生検施行のため入院した66名を対象とした起床時と就寝時のCcr変化の検討では,早朝尿TP/Crが0.30以上の患児において,早朝尿TP/Crが0.30以下で認められていた起床時Ccrと就寝時Ccrの有意な変化が認められなくなっていた。IgA腎症において早朝尿に蛋白が多くみられる群は,運動による何らかの影響を受けている可能性が示唆された。腎疾患患児には何らかの適切な運動処方が必要と考えられるが,内容についてはさらに検討が必要と思われる。