抄録
視覚的探索課題を遂行中の12名の健常成人の事象関連電位を記録した.課題における記憶負荷 (記憶セットの大きさ) と空間負荷 (刺激を処理すべき位置の数) を変化させた.被験者は, 5つの異なるアルファベットを横一列に配列した刺激に標的文字が含まれている時に反応するよう求められた.非標的刺激に対するERP波形に, 頭皮上分布の異なる2種類の陰性電位が認められた.記憶負荷の増加によって, 頭皮上全体に探索陰性電位 (Okita et aL, 1985) が増大した.もう一つの陰性電位は, 空間負荷によって変化し, Ritter et al. (1988) が報告したNAの第3成分と同様の頭皮上分布, すなわち後頭・側頭後部における最大振幅を示した.後者の陰性電位は, 記憶探索に関連するのではなく, 同時に呈示される複数の要素に対する空間的探索を反映すると思われる.