抄録
本研究は二重光刺激に対する視覚誘発電位 (ダブルVEP) に対して, 二元過程モデル (吉田, 1990a) を適用したものである.視角で2.と5.の小円形の光刺激を, 3つのコントラスト・レベル (1.0, 2.2, 3.4) で提示した.10ms幅のパルス光を, 50,100,200msの刺激間隔で2回与えて二重光刺激とした.後頭中心部 (Oz) からの典型的なVEPを分析した.簡略化した単一パルスVEPモデルは, オン成分のみからなり, オフ成分は含まないと仮定した.VEPモデルのパラメータは, フレッチャー・パウェル法と重回帰法によって決定した.合成されたモデル波形は原ダブルVEPとよく適合しており, 第2VEPの振幅は全刺激間隔条件でほぼ同じであった.単発VEPの興奮成分にもとづいた二重光の理論弁別曲線は, 心理物理的弁別曲線と同様な, 刺激の大きさ, コントラストの効果を示した.また, ここで用いた簡略化したパルスVEPモデルは人間の視覚系の解析に有用であると考えられる.