老人保健施設において, 肺結核と診断された症例を経験した。本件に対して行なわれた結核接触者健診の実際について報告する。 症例は80歳前半の間質性肺炎に対してステロイド治療中の女性。入所約3か月後に肺結核と診断された。結核接触者健診は保健福祉事務所が主体となって行なうが, 老人保健施設が関与する事項は多かった。老人保健施設利用者42名, 職員17名に対して, QFT検査と胸部X線撮影による健診を2年間に渡り実施した。老人保健施設では, 患者の施設内生活に関する情報, 感染期間内の利用者および職員の情報を, 保健福祉事務所へ提供した。さらに, 接触者健診に関する連絡と説明を健診者及び家族へ行なった。健診時に当施設を退所している健診者が多く, 所在の確認, 入所施設への連絡, 受診方法の調整など煩雑な点が多かった。職員に対する健診ではQFT検査結果を重視した対策を行ない, 陽性者は潜在性結核感染症として治療した。