日本農村医学会雑誌
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63 巻, 2 号
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原著
  • 軽部 彰宏, 齋藤 史子, 長尾 大輔, 大友 めぐみ, 田村 大輔, 木村 菜桜子
    2014 年 63 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     2008年1月から2011年5月までの間に, 当院で診断・治療を受けたCIN3 (cervical intraepithelial neoplasia) 以上の53症例について, 年齢分布とHPV (human papilloma virus) ジェノタイプを調べた。症例の平均年齢は39.5歳であり, 30歳台が最も多く (34%), 49歳以下で86%を占めた。高リスク型HPVは全体の97.1%に陽性であった。タイプ別の検出率は, 16型 (41.2%), 52型 (17.6%), 58型 (13.2%), 18型 (5.9%) の順であった。また, HPV16/18型陽性例と陰性例で, 子宮頸部病変が進展するリスクを検討した。CIN3以上でHPV16/18型陽性例の平均年齢は35.4歳, 陰性例は44.7歳であった (p<0.05)。40か月の観察期間中, 高リスク型HPV陽性であった179例で27例 (15.0%) にCIN2以下からCIN3以上への病変進展が認められた。HPV16/18型陽性例では30.9%に病変の進展が認められたが, HPV16/18型陰性例では8.1%であった。高リスク型HPVの中でもHPV16/18型の感染は頸部病変の進展に関連が深く, 子宮頸がんの若年発症に関係していると考えられた。
  • 天野 国明, 赤荻 博, 渡辺 新, 田中 ハルカ, 柴尾 洋介
    2014 年 63 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     近年高齢化に伴い転倒などによる非骨傷性頚髄損傷が増加しているとの報告が散見される。2006~2012年の6年間で, 受傷後2日以内に当院に入院し当科で治療に携わった頚椎頚髄損傷患者は167例で男性129例, 女性38例であった。平均年齢57.0歳, 男性56.9歳, 女性58.4歳, 60代にピークがあり, 一年平均24.0例であった。茨城西南広域消防本部内の発生頻度は神経症状を有する頚椎・頚髄損傷は32.0人/100万人/年であった。骨傷有が72例, 骨傷無95例であり, 受傷機転は交通事故38.9%, 転落28.7%, 転倒20.4%, その他12.0%であった。脊髄損傷は年間30~40/100万人でそのうち75%が頚髄損傷で, 20代と50代以降の2相性のピークがあり高齢者の骨傷のない不全麻痺例が増加傾向と報告されている。本調査では60代にピークがあり交通事故による受傷者数は減少傾向にあった。2011年3月11日に日本周辺における観測史上最大の地震である東日本大震災が発生し広範囲に甚大な被害が発生した。各年の受傷機転をみると2011年は転落受傷が14例45.2%と多く, そのうち6例が家屋の修理中の転落など震災の二次災害による受傷と考えられた。当地域は2011年の東日本大震災での震度は5強で, 直接的な被害は県内他地域に比べ大きくなかった。しかし屋根や瓦の修復等, 家屋保全や修復が必要な家屋は少なからずありその作業中の転落受傷のため他年と比べ転落による受傷が多かったと考えられる。
  • 池田 聡, 永田 千草, 鈴木 恵子
    2014 年 63 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     乳癌, 胃癌を対象に, 分子標的薬トラスツズマブの適応を調べるため行なわれるHER-2検査の当院における検出状況を集計し, その傾向を明らかにした。HER-2の発現は手術標本に比べて生検標本を材料にした場合, 陽性率が高くなった。胃癌においては, 組織学的に乳頭腺管型の癌でHER-2の陽性率が高く, 乳癌と比較してスコア2の症例でFISH陽性となる確率が高いことなどが明らかになった。また試験的に調べた結果, 大腸癌では高発現例の頻度は低いこともわかった。
  • 尾臺 珠美, 坂本 雅恵, 高木 香織, 小林 真弓, 中村 玲子, 吉田 卓功, 羅 ことい, 栗田 郁, 藤岡 陽子, 市川 麻以子, ...
    2014 年 63 巻 2 号 p. 105-113
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     2008年1月から2012年12月の5年間に当院で分娩した5,354例のうち, 常位胎盤早期離と診断された54症例を対象とし, 院内管理例27例と母体搬送され急速遂娩を要した (以下, 母体搬送例) 27例に分類し, 周産期背景と母児の予後について後方視的に比較検討した。母体死亡例はなく, 6例で子宮内胎児死亡を認めた。出血量や産科DIC (disseminated intravascular coagulopathy) スコアに両群間で有意差は認めず (各々p=0.088, p=0.400), またApgarscore (5分値) や臍帯動脈血pH値に有意差は認めなかった (各々p=0.721, p=0.154)。発症から急速遂娩までの時間は, 院内管理1321±132分, 母体搬送279±172分で, 院内管理例で有意に短かったが (p‹0.05), 産科DICスコア, Apgar score5分値において有意差を認めなかった (各々p=0.639, p=0.453)。発症から急速遂娩までの時間と母児の予後に相関は認めず, 発症早期でも母児ともに重症化する症例があり, 早期診断と可及的迅速な対応が母児の救命・予後改善には必須である。搬送が迅速に行なわれたとしても母児の予後改善につながらない可能性があり, 急速遂娩までの時間短縮のためには一次施設での急速遂娩が求められるが, そのためには急速遂娩後の周産期システム構築が必要である。
  • 前向き観察研究
    柴原 弘明, 村松 雅人, 西村 大作
    2014 年 63 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
    〔目的〕緩和ケアチームスタッフの自己貢献度と患者への効果を明らかにする。 〔対象と方法〕介入した患者への自己貢献度とSTAS-J症状版の介入前後の改善度を前向きに検討した。 〔結果〕自己貢献度では医師・看護師・臨床心理士・薬剤師は概ね高いが栄養士はやや低く, 年齢・性別・原発部位別・介入期間に関連がみられた。STAS-Jでは疼痛・嘔気嘔吐・食欲不振・不眠は改善, せん妄・抑うつは増悪した。自己貢献度とSTAS-J改善度では, 薬剤師は7項目に関連がみられたが他の職種は1項目のみであった。 〔考察〕自己貢献度には差があり, 介入しても必ずしも自己貢献度は高くなかった。個人の要素も大きいとは思われるが, 薬剤師は客観的な立場での評価や薬剤提案が可能であることが, 関連項目数の多い一因と考えられる。 〔結語〕各職種・個人の特性に基づいた活動を今後行なうことが望ましい。
  • 二井 宏紀, 井上 千絵
    2014 年 63 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     極小切開白内障手術下で眼内レンズ (IOL) 挿入前後の創口幅を検討した。極小切開白内障手術を行なった138眼にNY-60をN18カートリッジで, SN60ATをCカートリッジで, ZCB00とSN60WFをDカートリッジで挿入した。IOL挿入後創口幅は, NY-60が2.33mm (2.2mm角膜切開), 2.30mm (2.1mm角膜切開), 2.26mm (2.0mm角膜切開), 2.24mm (1.9mm角膜切開), SN60ATが2.34mm (2.2mm角膜切開), 2.43mm (2.2mm強角膜切開), SN60WFが2.34mm (2.2mm角膜切開), 2.29mm (2.1mm角膜切開), 2.20mm (2.0mm角膜切開), 2.11mm (1.9mm角膜切開), ZCB00が2.33mm (2.2mm角膜切開), 2.27mm (2.1mm角膜切開), 2.33mm (2.1mm強角膜切開), 2.29mm (2.0mm強角膜切開) であった。IOL挿入後創口は全例で拡大した。各IOL挿入システムの推奨切開幅は挿入可能な切開幅であり挿入による創への負担の無い切開幅ではない。
研究報告
  • 吉田 龍太, 北島 潔, 知々田 勝之, 本田 貴之, 川上 典孝, 石森 光一, 須藤 博之, 風間 顕成, 増子 英教, 吾妻 美幸, ...
    2014 年 63 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     X線TV用管球プロテクタ (管球プロテクタ) の有無による検査室内の空間線量の変化と各スタッフの立ち位置での空間線量低減率について検討を行なった。測定は散乱体となるファントムを設置し, 電離箱式サーベイメータを使用した。スタッフの水晶体・甲状腺・腹部・生殖腺に相当する高さで測定した。空間線量率の測定による散乱線分布図を作成し, 管球プロテクタによる空間線量低減率を算出した。水晶体・甲状腺の高さでは距離が遠くなるに従い, 空間線量はほぼ一定に低下した。腹部・生殖腺の高さでは寝台長軸方向の空間線量の低下が大きく, 水ファントム・寝台の影響が考えられる。管球プロテクタにより空間線量の75~90%低減と, 寝台付近のスタッフの水晶体・甲状腺の高さにおける空間線量の85~90%低下が明らかとなった。管球プロテクタは散乱線を閉じ込めるように遮蔽するため, 防護衣で防護できない四肢などの被曝低減になる。しかし, 患者の体型・術者の手技により隙間が生じるため, 漏れてくる散乱線を防護するためにも防護衣は着用する必要があると考える。管球プロテクタの有無による空間線量の変化を散乱線分布図の作成により把握することができた。管球プロテクタにより各スタッフの立ち位置で空間線量を75~90%低減させることができるため, スタッフの被曝低減に高い有用性がある。
  • 日比 英彰, 岡田 浩幸, 三輪 正治, 安部 威彦, 橋本 英久
    2014 年 63 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     今回MRI装置のバージョンアップにより造影剤を用いないMRPerfusion撮像法である3D ASL (Arterial Spin Labeling) 法が使用可能になった。そこで撮像条件が脳血流量cerebral blood flow (CBF) 値 (単位組織量あたりの脳血流量[ml/min・100g]) へどのように影響されるのか検討を行なったので実際の臨床例を交えて報告する。撮像条件の検討については,arm及び加算回数 (NEX) を可変させた場合におけるCBF値の変化を検討した。結果, 各撮像条件を変化させて撮像を行なっても脳内の各領域のCBF値に大きな差は認められなかった。CBF値へ影響されなかった要因として, armは画像の空間分解能に, NEXはSN比に影響を及ぼすが, ラベリングされた血液のスピンに対して影響しなかったためと考える。
症例報告
  • 関節可動域の経過を中心に
    豊田 和典, 矢上 健二, 板垣 昭宏
    2014 年 63 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     Zuggurtung法後の理学療法では, 骨癒合を高める膝関節自動屈曲運動は早期から可能となる一方, 膝関節自動伸展運動は骨折部を離開させる方向へのストレスとなり注意が必要である。Zuggurtung法が導入されて以来, 膝蓋骨骨折の治療成績は向上しているが, 骨折型によっては実施できないこともあり, その場合理学療法時のリスクはZuggurtung法後のそれとは勿論異なる。今回,Zuggurtung法を実施できなかった膝蓋骨遠位骨折の2症例を経験した。リスクを明確にし, Knee Brace固定中から積極的に膝蓋骨上方支持組織の柔軟性および滑走性を維持した結果, Zuggurtung法を実施した膝蓋骨骨折例とほぼ同様の治療成績を得ることができた。膝蓋骨骨折に対して行われた観血的整復固定術の内容や特性からリスクを理解し, 理学療法を進めることが重要であった。
  • 西村 妙子, 唐澤 忠宏, 樋口 夏美, 小池 ひづる
    2014 年 63 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     老人保健施設において, 肺結核と診断された症例を経験した。本件に対して行なわれた結核接触者健診の実際について報告する。  症例は80歳前半の間質性肺炎に対してステロイド治療中の女性。入所約3か月後に肺結核と診断された。結核接触者健診は保健福祉事務所が主体となって行なうが, 老人保健施設が関与する事項は多かった。老人保健施設利用者42名, 職員17名に対して, QFT検査と胸部X線撮影による健診を2年間に渡り実施した。老人保健施設では, 患者の施設内生活に関する情報, 感染期間内の利用者および職員の情報を, 保健福祉事務所へ提供した。さらに, 接触者健診に関する連絡と説明を健診者及び家族へ行なった。健診時に当施設を退所している健診者が多く, 所在の確認, 入所施設への連絡, 受診方法の調整など煩雑な点が多かった。職員に対する健診ではQFT検査結果を重視した対策を行ない, 陽性者は潜在性結核感染症として治療した。
資料
  • 平川 仁尚
    2014 年 63 巻 2 号 p. 151-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/01
    ジャーナル フリー
     介護関係者の抱えるストレスは,介護関係者自身の健康状態を悪化させるだけでなく,業務遂行能力を落とし,要介護高齢者のクオリティー・オブ・ライフにも悪影響を及ぼすため,介護関係者のメンタルヘルス対策は喫緊の課題である1)。そこで,「アンガーコントロールトレーニング2)」を参考にして,怒りのセルフコントロール能力の獲得を目的としたワークショップを介護関係者向けに実施したので報告する。参加者は13名で,平均年齢は43.6歳であった。ワークショップは,4つのメインセッションである「自由討論~怒りとは」,「思考のゆがみ」,「10のよくある不合理な信念」,「怒りの分析」で構成された。メインセッションの前に参加者自身が普段行なっているストレス発散法を紹介しつつ自己紹介を行なった。「自由討論~怒りとは」では,ワールドカフェ形式で参加者に自由討論を行なってもらった。「思考のゆがみ」では,思考のゆがみ,つまり出来事についての思考の道筋が過去の体験によって形成された不合理な信念によって,ネガティブな感情が作り出され,あるいは増強させられることを説明し,前述のガイド2)に掲載されている例文の一部をアレンジしたものを題材に代表的な思考のゆがみについて考えてもらった。「10のよくある不合理な信念」では,「私はすべての人から好かれ,認められなければならない。」など怒りを引き起こしやすい不合理な信念(思い込み)のうち,参加者一人ひとりに自分に当てはまる信念を挙げてもらい,それぞれ合理的な他の信念に書き換えてもらった。「怒りの分析」では,参加者一人ひとりに印象に残っている怒りに打ち震えた場面を振り返ってもらい,ロールプレイを行なってもらった。今回のワークショップにおける参加者の学びを明らかにするために,KJ法を用いてアンケート内容を質的に検討した結果を示す(図1)。参加者は,怒ることには何の意味もないこと,怒りは些細なことから生じておりコントロール可能なこと,人によって様々な考え方や怒りがあること,過去の経験や他人の言動が自分の考え方に強い影響を与えていること,怒りは分析可能なこと,などを学んでいた。その学びを受けて,明日からワークショップの成果を現場などで活用していこうと前向きな態度になっていた。ただし,ストレスをマネジメントするのではなく,「ガス抜き」することが必要だという意見もみられた。  以上のように,今回のアンガーマネジメントワークショップは参加者によい効果を与えたと考えられた。
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