日本農村医学会雑誌
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研究報告
膵頭十二指腸切除術における手術部位感染対策
真皮埋没縫合の有用性の検討
小池 卓也河野 悟塩見 理紗荒井 真高橋 雅史保刈 岳雄高野 靖悟
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2015 年 64 巻 2 号 p. 161-165

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抄録

〔目的〕膵頭十二指腸切除術 (以下PD) 後の手術部位感染 (以下SSI) 対策として合成吸収糸による真皮埋没縫合を導入し, その有用性について検討した。 〔対象・方法〕2006年3月から2014年3月までにPDを施行した69例に対し, 2006年3月から2010年3月までスキンステイプラ (注 : 金属製の皮膚縫合器) にて閉創した38例 (非埋没群) と2010年4月から2014年3月まで真皮埋没縫合 (注 : 縫合糸を皮下に埋没する縫合法) にて閉創した31例 (埋没群) に分け, 両群間の年齢, 性別, BMI, 喫煙歴, 糖尿病・透析の既往, 手術時間, 出血量等, SSI発生に関わる因子を検討し, SSI発生率を比較した 〔結果〕表層SSI発生 (注 : 切開創表面の感染) は非埋没群8例 (21.0%), 埋没群3例 (9.7%) であった。真皮埋没縫合群で発生率が低下したが, 有意差は認めなかった (P=0.17)。その他の因子には有意な差は認めなかった。 〔結語〕今回の検討ではPD後のSSI対策として, 真皮埋没縫合には統計学的な有意差は認めなかった。しかし, 表層SSIは減少傾向であり, 病棟業務の軽減・患者満足度への貢献という利点もあり, 今後症例を重ねて更なる検討を加えていく必要があると考えられた。

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© 2015 一般社団法人 日本農村医学会
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