日本農村医学会雑誌
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原著
医療スタッフの統計力(仮説検定の理解)とそれに影響する要因
三浦 崇則稲垣 久美子犬塚 斉藤永 一弥
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2024 年 73 巻 2 号 p. 61-70

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抄録
 医療統計は臨床で得られた結果の有意性を評価するために,その正しい理解と使用が必要である。しかしながら,当院では医療スタッフの医療統計に対する理解について,客観的評価で確認したことはない。そこで,本研究ではスタッフが医学統計を理解しているかどうかを明確にするため,客観的評価による質問調査を実施した。
 当院のスタッフ1,498名中464名(回答率31.0%)が回答した。調査表の内容は,職種,研究経験の有無,論文作成経験の有無,および医療統計を評価したり使用するうえで重要と考えられる以下の項目,すなわち,p値の解釈,t検定とMann-WhitneyのU検定を使い分ける理由(以下,検定の使い分け),Mann-WhitneyのU検定の結果の示し方(以下,結果の示し方),独立性を評価指標とする統計手法の選択(以下,統計の選択)である。
 p値の解釈,検定の使い分け,結果の示し方,および統計の選択の正解率は,それぞれ20.5%,16.2%,6.3%および15.1%であった。正解率および正解数は,研究経験「有」および論文作成経験「有」の方が,それらの経験「無」に比べて,有意に高かった。また,正解数は研究経験,論文作成経験および職種(医師・研修医および薬剤師)と関連づけられた(R2=0.430)。
 客観的評価に基づくスタッフの医療統計に対する理解度は低く,その理解度に影響する要因の一部を確認できた。今後,医療統計の理解を進めるために,臨床研究や論文作成の経験から学ぶことの重要性を示唆するものである。
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© 2024 一般社団法人 日本農村医学会
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