抄録
1985年より1989年までの5年間における当院施設検診発見胆石例111例 (以下, A群とする) と, 同期間に当科で経験した併存病変を有した胆石手術例67例 (以下, B群とする) を, 主として悪性疾患を中心に比較検討した。A群は検診受診者2,637人中111例 (4.2%) に認められたが, 消化器悪性疾患の併存は総胆管結石の疑いで入院, 精査後三管合流部の癌であった1例であった。B群は胆石手術例321例中の67例 (20.9%) で, そのうち37例 (55.2%) に45病変の消化器癌を主とした悪性疾患が認められた。また37例中11例 (29.7%) が下部消化器癌であったが, 入院時便潜血反応は37例のうち不明例9例を除く28例中8例 (28.6%) が陽性で, 精査後の偽陽性率は14.3%であった。さらに胆石放置例4例に胆嚢癌が認められた。したがって農協検診での大腸早期癌発見のためには便潜血検査のみでは十分とはいえず, 広く下部消化管検査の必要性を啓蒙すべきで, 上部消化管と同様に内視鏡によるスクリーニングを導入すべき時期にきているかと思われた。また無症状がほとんどの検診発見胆石例に対しても胆嚢癌の発症ならびに悪性疾患の併存を念頭においた厳重な経過観察が心要と思われた。