リハビリテーション医学
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失語症者の復職について
渡邉 修宮野 佐年大橋 正洋久保 義郎
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2000 年 37 巻 8 号 p. 517-522

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抄録
日常生活は自立しても,失語症者の復職は大きな問題となる.今回我々は,発症以前になんらかの職業に従事していた失語症者に対し復職状況を調査した.症例は脳卒中が原因の失語症者50例(平均年齢49歳)である.失語のタイプは,ブローカ失語(B type)16例,ウエルニッケ失語(W type)9例,全失語(G type)5例,健忘失語(A type)20例.全例バーテルインデックスで90以上,半側空間無視や失行を認めず,歩行は自立,机上の検査をする上での聴覚理解は保たれている症例を選択し,動作性知能検査(PIQ)を施行した.失語タイプ別では,W type(中等度),G type(軽度)で有意にPIQは低値であった.復職率はB type(軽度)とA type(軽度)で有意に高く,また全症例において,復職群の平均PIQは89.3であるのに対し,福祉的就労群,失職群では75.1,76.2と統計学的に有意に低値であった.復職内容は,管理職的職種および動作性要素の強い職種が多かった.失語症者の復職の可能性の1つの指標として,失語のタイプ分類と重症度,残存機能としての動作性知能指数は有益な情報を与えると思われた.
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© 社団法人 日本リハビリテーション医学会
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