The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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特集『歩行再建への挑戦』
大腿骨近位部骨折のリハビリテーションからみえる廃用症候群
三好 正堂
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2016 年 53 巻 1 号 p. 17-26

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抄録

 大腿骨近位部骨折の治療には,早期手術と早期リハビリテーションが必要である.しかし今回の143例の調査で,早期に手術した例(骨折1〜2日目)と遅く手術した例(骨折後3〜19日目)で急性期病院在院日数,回復期病院在院日数,ADL利得,膝伸筋力増加値に差がなかった.このことは手術を遅くしてよいことを意味するのではない.骨折前に「歩行障害なし」(12例)・「屋外歩行自立」(36例)のうち,骨折後の歩行レベルで「自立歩行」になった40例の骨折-手術日数が3.7日で,「自立歩行」を回復しなかった8例の骨折-手術日数が6.8日で,差は有意であった.
 一方,急性期病院におけるリハビリテーション(以下,リハ)は著しく不足しており,骨折前に「歩行障害なし」と「屋外歩行自立」の計48例が,急性期病院に平均19日間入院して回復期病院へ転院したとき,非骨折側膝伸筋力は健常者の平均56%(10〜112%)に低下し,しかも急性期病院への入院が長くなるほど膝伸筋力は低下していた. このことから,本症の治療成績を上げるためには,早期手術だけでなく,骨折後早期の強力なリハの実践が必要であることが示唆された.

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© 2016 社団法人 日本リハビリテーション医学会
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