The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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特集『高次脳機能障害のリハビリテーション―回復の可能性―』
軽度外傷性脳損傷(MTBI)後の症状・障害と回復
先崎 章
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2016 年 53 巻 4 号 p. 298-304

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抄録

 軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury,以下MTBI)は情報処理速度,注意,記憶の機能障害と関連していて,決して症状が軽いというわけではない.これらの損傷は受傷直後からあらわれ,数週間続く.スポーツによるMTBIでは,脳震盪後症候群の症状が1 カ月程度の間に急速に改善するが,一方,数%の例で長い期間,後遺症が持続する.交通外傷によるMTBIでは,かなりの割合で自覚症状が持続しうる.患者にMTBIは認知機能に低下を生じうるとの危惧を伝えると,検査の値の一部が低下傾向を示すという報告がある.改善がみられず,回復が遅れることに関連する要因として,微細な神経病理学的な損傷のほかに,受傷時の年齢,ある種の合併症,受傷前に患っていた精神医学的疾患や受傷による精神医学的疾患の発症や悪化,他の身体系統の損傷,心理社会的な要因などが考えられる.受傷後の脳神経外科的症状,精神医学的症状の両方を,MTBIによって直接生じる症状として扱うことが欧米のスタンダードになっている.

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© 2016 社団法人 日本リハビリテーション医学会
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