The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
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53 巻, 4 号
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巻頭言
特集『高次脳機能障害のリハビリテーション―回復の可能性―』
  • ―半側空間無視と関連症状―
    石合 純夫
    2016 年 53 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     右半球の脳血管障害後の主要な高次脳機能障害は,半側空間無視,病態失認,半側身体失認である.特に半側空間無視は,急性期を過ぎても残ることが少なくなく,リハビリテーションの実施にあたって見落としのない評価と対応が重要である.日常生活動作を念頭に置いた探索訓練に加えて,プリズム順応などのボトムアップアプローチ,低頻度反復経頭蓋磁気刺激も含めて,幅広く改善の手がかりを得たい.また,半側空間無視があるなりに日常生活動作を可能とする機能的アプローチも欠かせない.右半球損傷では,言語性に頭でわかったような応答をすることが多い一方で,真の病識は乏しい.転倒リスクも高くチームアプローチでの評価と対応が大切である.
  • 前島 伸一郎, 岡本 さやか, 岡崎 英人, 園田 茂, 大沢 愛子
    2016 年 53 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     失語症は,いったん獲得された言語機能が,言語領野の器質的病変によって障害を受けた状態をいう.失語症の回復は,発症直後から数カ月以上にわたってみられる.そのメカニズムとして,①損傷された機能領域の回復,②残存領域における機能の再構成,③対側半球による代償機能あるいは対側皮質の賦活などが考えられているが,発症からの時期によって異なる機序を示す可能性がある.失語症の治療として,種々の言語聴覚療法に加え,薬物療法,電気刺激療法などが試みられている.失語症に対する言語治療のエビデンスを示すためには,常に客観的評価を行い,課題の量や頻度が適切かどうかを検証する必要がある.言語療法の効果は言語機能に対するものだけでなく,コミュニケーション能力向上としての役割が大きい.
  • 青木 重陽
    2016 年 53 巻 4 号 p. 280-286
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     前交通動脈瘤破裂患者は,記憶障害を呈することが多く,前脳基底部との関連性が議論されている.また,実際には複数部位の脳損傷を伴うことが多く,さまざまな症状を呈することにもなる.戦略獲得訓練や代償手段の導入が考慮されるが,使用すべき残存機能の部分も障害されていることが多いため,より丁寧な対応が求められる.転帰については,発症1年を過ぎても症状が残っていることが多く,情動面と社会面に課題を残す者が多い.このように発症後時間を経た後に顕在化する情動面や社会面の課題に対しても,リハビリテーションの必要性があることが指摘されている.
  • ─記憶障害の回復とリハビリテーション─
    浦上 裕子
    2016 年 53 巻 4 号 p. 287-291
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     ヘルペス脳炎と抗NMDA(N-methyl-D-aspartate)受容体脳炎の記憶障害の特徴と回復,予後,リハビリテーションを検討する.ヘルペス脳炎では側頭葉内側部が損傷され,前向性健忘と逆行性健忘を生じ,50%以上の例では1年後も持続する.前向性健忘の著明な改善は認められず,代償手段の活用が必要となる.保たれている手続き記憶を活用した視知覚運動学習が生活全般に汎化され,生活障害の改善につながる可能性がある.抗NMDA受容体脳炎では急性期の免疫療法後の記憶障害全般の回復は良好な場合が多いが,免疫療法の開始が遅れた場合,健忘が残存することもある.遂行機能や展望記憶は改善する場合が多く,これらの機能を汎化して社会参加を促進することが必要である.
  • 山里 道彦
    2016 年 53 巻 4 号 p. 292-297
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     外傷性脳損傷(traumatic brain injury,以下TBI)はび漫性軸索損傷を伴う場合,回復期以降に症状が深刻化する傾向があり,認知リハビリテーション(以下,リハ)の介入が重要である.Ciceroneらは,認知リハに関する論文を総括し,有効な介入のエビデンスを3段階に分けて示し,中等度~重度障害のTBIに対して,メタ認知訓練,外的補助手段の利用,実践的なコミュニケーション技術の習得,自己モニタ法,全人的包括的アプローチを,最も高い推奨レベルとした.エビデンスが検証されたこれらの介入のエッセンスを捉え,実際の臨床の場で応用・工夫を加えていくことが,リハ担当者には求められる.
  • 先崎 章
    2016 年 53 巻 4 号 p. 298-304
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     軽度外傷性脳損傷(mild traumatic brain injury,以下MTBI)は情報処理速度,注意,記憶の機能障害と関連していて,決して症状が軽いというわけではない.これらの損傷は受傷直後からあらわれ,数週間続く.スポーツによるMTBIでは,脳震盪後症候群の症状が1 カ月程度の間に急速に改善するが,一方,数%の例で長い期間,後遺症が持続する.交通外傷によるMTBIでは,かなりの割合で自覚症状が持続しうる.患者にMTBIは認知機能に低下を生じうるとの危惧を伝えると,検査の値の一部が低下傾向を示すという報告がある.改善がみられず,回復が遅れることに関連する要因として,微細な神経病理学的な損傷のほかに,受傷時の年齢,ある種の合併症,受傷前に患っていた精神医学的疾患や受傷による精神医学的疾患の発症や悪化,他の身体系統の損傷,心理社会的な要因などが考えられる.受傷後の脳神経外科的症状,精神医学的症状の両方を,MTBIによって直接生じる症状として扱うことが欧米のスタンダードになっている.
  • ―高次脳機能障害とリハビリテーション―
    大賀 優
    2016 年 53 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     小児の高次脳機能障害を考えるにあたり,成人との大きな相違はコミュニケーション能力まで含む教育を受ける学習環境下にあることと,発達過程にあるため正常発育の観点から障害回復程度を判断する必要があることである.リハビリテーション(以下,リハ)においては,神経心理学的・心理社会的・就学(就労)の3つのアウトカム評価をもとに,①障害そのものの改善,②代償手段の活用・環境調整,③復学(就学)支援,④周囲関係者を含めた障害の理解受容や養育者支援を展開していく.米国をはじめとした先進諸外国と比較し,わが国では小児外傷性脳損傷後高次脳機能障害のリハはその緒についたばかりだが,近年就学支援体制構築への方向づけがされつつある.
  • 栗原 まな
    2016 年 53 巻 4 号 p. 311-315
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     当院で入院リハビリテーションを行った16歳未満で発症した低酸素性脳症例35例(発症年齢平均5歳8カ月)の,急性期の状況と後遺症の状況を調査し,高次脳機能障害に焦点をあてて検討した.発症原因は溺水12例,窒息6例,心疾患10例などで,原因により年齢分布が異なっていた.後遺症は身体障害28例,知的障害30例,てんかん16例,高次脳機能障害12例であった.高次脳機能障害の内訳では視覚認知障害・注意障害が多かったが,小児では評価バッテリーに頼りきらず生活の中での把握が大切であった.それらへの対応についても述べた.
教育講座
連載
高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術
ISPRM招致活動記録
症例報告
  • 北惠 詩穂里, 辻野 精一, 土岐 明子, 山中 緑, 渡邉 学
    2016 年 53 巻 4 号 p. 330-336
    発行日: 2016/04/18
    公開日: 2016/05/20
    ジャーナル フリー
     We report five cases of anti-N-methyl-D-aspartate receptor (NMDAR) encephalitis. Five women (27-38 years), Who-presented with psychiatric symptoms, neurological complications, and decreased consciousness, were diagnosed with anti-NMDAR encephalitis after testing positive for serum anti-NMDAR antibodies. The mean(±SD)for hospitalization duration was 272.4(±144.8)days. All patients presented with respiratory failure due to central hypoventilation and required mechanical ventilation for 50.2(±13.1)days on average. Four patients showed no abnormal findings upon brain MRI, one showed high intensity lesions in the right temporal cortex and bilaterally in the hippocampus on T2 weighted images. Higher brain function assessment revealed an overall decrease in intelligence, attention, memory, and executive function in all patients. Temporal assessments revealed progressive improvement in these dysfunctions over several years. Four patients presented with deep venous thrombosis, articular contracture, ectopic ossification, and compression paralysis during the first immobility episode. Two had severely impaired communication and ability to perform activities of daily living when admitted for rehabilitation. However, eventually all the patients attained a premorbid state.
     Anti-NMDAR encephalitis possibly results from reversible synaptic dysfunction;therefore, it has a better functional prognosis compared with classical limbic encephalitis and other paraneoplastic neurologic syndromes. Previous studies found abnormalities in the limbic area on MRI in about 25% of patients, although other findings were non-specific. Prevention of disuse syndrome due to prolonged immobility is important in acute phase rehabilitation. Our study shows that long-term temporal assessments of higher brain function are necessary and useful in the chronic stage.
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