日本胸部疾患学会雑誌
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放射線肺臓炎の発症機序に関する実験的検討 -肺胞マクロファージの活性化を中心として-
三浦 剛史
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1992 年 30 巻 2 号 p. 285-292

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抄録
放射線肺臓炎の発症機序を明らかにすることを目的としてラット実験モデルにおけるBAL液所見, 肺胞マクロファージ (AM) の nitroblue tetrazolium (NBT) 還元能, 病理組織像の経時的な変化を検討した. 放射線照射は200kVp, X線40Gyの右全胸郭1回照射とした. 病理組織像では照射21日後までは特に異常所見はみられず, 28日後から炎症細胞浸潤や fibrin の析出などがみられた. BAL液総細胞数の増加やAM比率の減少, リンパ球および好中球比率の増加も照射28日後からみられた. AMのNBT還元能は照射21日後で有意に高値を示し28日後以降では再び低下した. 即ちBAL液総細胞数や細胞分画, 病理組織像において放射線肺臓炎としての変化が出現する時期の直前にAMのNBT還元能が一過性に上昇しており, 放射線肺臓炎の発症においてAMの活性化が重要な意味をもつものと考えられた. この結果からAMの活性化を中心とした放射線肺臓炎の発症機序に関する仮説を推察した.
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