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福地 義之助, 本宮 雅吉
1992 年 30 巻 2 号 p.
167-229
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
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一石綿工場従業員の追跡調査より
田村 猛夏, 春日 宏友, 西川 潔, 成田 亘啓, 佐田 和夫, 宮崎 隆治, 斉藤 宣照, 三上 理一郎
1992 年 30 巻 2 号 p.
230-237
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
1985年まで25年以上石綿工場で勤務してきた78名の石綿労働者について, 胸部X線写真上の横隔膜胸膜病変 (主として石灰沈着) を retrospective に検討した. 横隔膜胸膜病変は, 21例の32側において認められた. これらの症例において, 石灰沈着は, 18例の26側において認められ, そのうち両側の石灰沈着は8例において認められた. retrospective な観察の結果として, その初発所見が, 横隔膜突出像であった19側中最終的に同部に石灰沈着を伴ったものが最も多く13側であった. 初曝露と石灰沈着の出現までの期間は, 15年から31年の範囲にあった. 曝露期間のみが, 横隔膜胸膜石灰沈着の出現と有意に相関していた. 年齢, 喫煙歴および曝露程度とは有意に相関しなかった.
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非腫瘍性病変について
加藤 温中, 京野 洋子, 桑原 紀之
1992 年 30 巻 2 号 p.
238-247
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
ディーゼル排気の吸入実験による呼吸器の非腫瘍性病変を電子顕微鏡により検索した. ラットに対し, ディーゼルエンジン排気を30ヵ月間吸入させ, 6ヵ月ごとに光学および電子顕微鏡により形態学的な観察を行った. 肺実質域の特徴的な変化は, ディーゼル排気中の粒子成分による炭粉沈着であり, 肺内には, 粒子を飽食した肺胞マクロファージ (AMp) の集積巣が散在していた. その部位の肺胞壁では, 1型上皮の粒子取込み, 2型上皮の腫大・増生, ラメラ体の腫大・増加, 微絨毛の増加・伸長を認め, 間質には, 膠原線維の増加, 粒子貪食AMp, 好中球および肥満細胞や形質細胞などの細胞浸潤が見られた. 肺胞腔内には粒子貪食AMpに加えて粒子貪食好中球, AMpの崩壊物, ラメラ体の貯留などが著明な変化として認められた. 一方, 気道上皮の変化は, 排気中のガス成分の影響と見なし得る, 線毛の局所的な短縮と非線毛上皮の膨隆のみであった. これらの変化は, 粒子濃度1mg/m
3以上の吸入群で6ヵ月から現われ, 吸入濃度の上昇および吸入期間の延長と共に進展した.
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井上 博雅, 相澤 久道, 池田 東吾, 松崎 義和, 広瀬 隆士
1992 年 30 巻 2 号 p.
248-255
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
モルモット気道の非アドレナリン・非コリン作動性抑制神経 (NANC抑制神経) について検討し, 以下の成績が得られた. (1) in vitro において, モルモット気管平滑筋はNANC抑制神経の支配を受けており, これは交感神経支配よりも優位であった. (2) in vivo モルモットでR
L, C
Lを指標とし, 迷走神経刺激を行ったが, 気道攣縮に引き続く明らかな弛緩はみられなかった. プロプラノロール投与後には, 気道攣縮反応の回復の遅延がみられ, NANC抑制神経による明らかな弛緩は認められなかった. そこで, ヒスタミンによる気道攣縮時の抑制神経系の関与を検討した. その結果, (3) ヒスタミンによる気道攣縮はプロプラノロール投与後に増強した. また, プロプラノロール投与後に迷走神経を遮断するとヒスタミンによる気道攣縮はさらに増強した. これは迷走神経内を走行するNANC抑制神経による抑制作用が消失したためと考えられる. これらの結果は, in vivo の実験系においてもモルモットの気道攣縮反応の抑制にNANC抑制神経が関与していることを示すものである.
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山本 博之, 阿部 直, 田所 克己, 矢那瀬 信雄, 冨田 友幸
1992 年 30 巻 2 号 p.
256-261
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
Computed Tomography (以下CT) は間質性陰影の客観的評価には, 必ずしも有用と言えず, 現在臨床に活用されていない. そこで我々は, Thin slice CT による間質性陰影の客観的評価法を検討した. 間質性陰影を呈する37例と, 正常例13例を対象とした. 大動脈弓部, 気管分岐部下約2cm, および右横隔膜上約1cmの3つのレベルで Thin slice CT を撮影し, 左右計6ヵ所の全肺野を関心領域としてCT値を測定した. CT値を1,000~-900, -900~-750, -750~-500, -500~100の4つの帯域に分け, 各帯域の面積百分率と, 呼吸機能とを比較検討した. 間質性陰影を呈する症例では, 正常例に比べ-900から-750のCT値成分が少なく, -750よりプラス側の成分が多かった. また, 各帯域の面積百分率と, 肺気量および肺拡散能力との間に相関関係が認められた. Thin slice CT は, 間質性陰影の性状や広がりを客観的に評価する方法として有用であると考えられる.
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大熨 泰亮, 上岡 博, 畝川 芳彦, 木浦 勝行, 田端 雅弘, 柴山 卓夫, 前田 忠士, 宮武 和代, 瀧川 奈義夫, 木村 郁郎
1992 年 30 巻 2 号 p.
262-269
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺小細胞癌治療における薬剤耐性の発現は化学療法効果を制約する最大の因子である. その発現機序は多岐にわたるが, 腫瘍細胞の不均一性に起因する clonal selection, MDR-1遺伝子の増幅, 薬剤解毒機構の亢進などが注目されている. 著者らは, 治療前後の腫瘍組織が入手可能であった22例を対象に, clonal marker として carcinoembryonic antigen と neuron-specific enolase を, MDR-1についてはその遺伝子産物である P-glycoprotein を免疫染色法を用いて組織学的検索を加え, 治療前後の変化を比較した. その結果, 治療前CEA陰性から治療後にはCEA陽性に転ずる症例が認められ, このような症例は治療に抵抗したところから, 臨床における薬剤耐性の発現に clonal selection の関与が窺われた. また, P-glycoprotein を発現するものは治療後に増加したが, 薬剤耐性との関連性は臨床的には明らかではなかった.
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陳 和夫, 大井 元晴, 福井 基成, 栗山 隆信, 平井 正志, 久野 健志
1992 年 30 巻 2 号 p.
270-277
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) 患者の治療経過, 予後, 臨床症状, 交通事故の有無などを明らかにするためポリソムノグラフィー診断後, 1年以上の経過をみた34症例について検討した. 34症例の平均観察期間は36.0±19.7 (SD) ヵ月, 無呼吸低換気回数/時間 (AHI) は50.8±24.9であった. OSASに対する体重減量療法は, 当初, 有意な (p<0.01) 体重減量をみたが, 再度体重増加を招いていた. NCPAP療法は5例に施行され, 非常に有効であったが, NCPAP装置購入費の経済的援助が必要と思われた. アセタゾラマイドは10例に使用され, 5例において継続使用されていた. 日中の傾眠傾向は約60%にみられ, 運動免許保持中の25名中9名は交通事故を経験し, 交通事故経験者にはAHI 30以上の症例が多かった. 経過観察期間中の34症例においては, 重篤な脳心血管障害は認められなかったが, 今後さらなる継続した治療及び予後調査が必要であると思われた.
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日野 光紀, 小笠原 秀人, 吉井 章, 米田 修一, 野口 行雄, 酒井 洋, 吉田 清一
1992 年 30 巻 2 号 p.
278-284
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
肺小細胞癌症例に対する血清CEA値測定の臨床的意義を検討した. 特に初回診断時の血清CEA値と抗癌剤による化学療法の効果との関係につき分析した. EIA法にて血清CEA値が10.0ng/mlを越える高値症例は評価可能97例中26例であり, これらの症例は抗癌剤化学療法に奏効しない傾向にあった. さらに生存期間に関してはLD症例に限ってみるとCEA値高値症例はそれ以下の値を呈する症例に比して生存期間が短い傾向を示した. 以上の事実より, 小細胞癌症例では腫瘍の広がりが比較的軽度であるにもかかわらず血清CEA値が高値の症例は, その抗癌剤による化学療法に対する奏効性や, それにともなう生存期間の違いなどからも従来の小細胞癌から独立した, biological combined type として治療の上でも他の小細胞癌と区別する必要がある可能性が示唆された.
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三浦 剛史
1992 年 30 巻 2 号 p.
285-292
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
放射線肺臓炎の発症機序を明らかにすることを目的としてラット実験モデルにおけるBAL液所見, 肺胞マクロファージ (AM) の nitroblue tetrazolium (NBT) 還元能, 病理組織像の経時的な変化を検討した. 放射線照射は200kVp, X線40Gyの右全胸郭1回照射とした. 病理組織像では照射21日後までは特に異常所見はみられず, 28日後から炎症細胞浸潤や fibrin の析出などがみられた. BAL液総細胞数の増加やAM比率の減少, リンパ球および好中球比率の増加も照射28日後からみられた. AMのNBT還元能は照射21日後で有意に高値を示し28日後以降では再び低下した. 即ちBAL液総細胞数や細胞分画, 病理組織像において放射線肺臓炎としての変化が出現する時期の直前にAMのNBT還元能が一過性に上昇しており, 放射線肺臓炎の発症においてAMの活性化が重要な意味をもつものと考えられた. この結果からAMの活性化を中心とした放射線肺臓炎の発症機序に関する仮説を推察した.
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河端 美則, 岩井 和郎, 杉田 博宣, 小山 明, 片桐 史郎, 高木 健三, 近藤 康博, 谷口 博之, 草島 建二, 大石 不二雄
1992 年 30 巻 2 号 p.
293-301
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
開胸肺生検を実施した膠原病にみられる肺病変の病理学的特徴, 画像上の特徴, ステロイド反応性を知るために臨床病理学的検討を実施した. 対象は10例で, 男4, 女6例, 平均年齢は55歳である. うち3例は肺病変が膠原病に先行した. 病理学的には Bronchiolitis obliterans organizing pneumonia の所見を示すものが6例, 慢性間質性肺炎が3例, 急性間質性肺炎が1例で, その他高率に広義の間質の炎症や細気管支の炎症をみた. BOOP所見を示す例は画像上は限局性スリガラス影または縮みを伴う下肺野中心の陰影で, 慢性間質性肺炎例では粒状網状影がみられ, その活動性例ではスリガラス影が重なっていた. BOOP所見の有る6例と活動性慢性間質性肺炎の2例にステロイドが使用され全例有効であった. 膠原病にみられる肺陰影の一部に対し開胸肺生検が診断の確定や治療方針の決定に有用であると判断された.
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淀縄 聡, 塚越 秀男, 青木 栄, 黒沢 元博
1992 年 30 巻 2 号 p.
302-309
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
先に筆者らが報告した気道平滑筋の収縮率を気道過敏性の指標と考えても差し支えない式を用い, LTC
4, LTD
4静脈内投与によるモルモット気道反応性の変化を検討した. LTC
4, LTD
4を投与すると気道粘膜浮腫を生じ, ヒスタミン静脈内投与による気道平滑筋の収縮率が増加した. この反応はLT拮抗薬により抑制されることから, LTC
4, LTD
4は気道粘膜浮腫形成作用および気道過敏性亢進作用を有するメディエーターであることが示唆された.
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電気的特性に及ぼす影響とその作用機序
玉置 淳, 近藤 光子, 千代谷 厚, 山内 富美子, 竹内 聰美, 金野 公郎
1992 年 30 巻 2 号 p.
310-316
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
気道上皮細胞におけるβ
3-アドレナジック受容体の存在とその生理作用を明らかにする目的で, イヌ気管培養上皮細胞を用い, Ussing's short-circuited technique によりその電気的特性の変化を検討した.β
3-アドレナジック受容体刺激薬であるBRL37344は, 漿膜側投与時に細胞内 cyclic AMPを増加せしめ, short-circuit current (Isc) を用量依存性に亢進させた. 以上の反応は, isoproterenol の場合と異なり,β
1およびβ
2-アドレナジック受容体拮抗薬による抑制を受けず, cyanopindolol により競合的に拮抗された. また Schild plot における cyanopindolol のpA
2値は, BRL37344と isoproterenol の両薬剤間で有意差が認められた. BRL37344によるIscの上昇は, amiloride による影響を受けず, bumetanide, diphenylamine-2-carboxylate, Cl-free メディウムなどで抑制された. 以上の成績より, 気道上皮細胞におけるβ
3-アドレナジック受容体の存在が示唆され, cyclic AMP依存性のCl分泌を惹起せしめるものと考えられた.
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糸井 和美, 柳原 一広, 大久保 憲一, 桑原 正喜
1992 年 30 巻 2 号 p.
317-321
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
Recklinghausen 病は常染色体優生遺伝の遺伝性疾患で, 悪性腫瘍を高頻度に合併する奇形症候群の一つと考えられているが, そのほとんどが神経線維肉腫であり, 肺癌との合併はきわめて希である. 我々は最近 Recklinghausen 病に合併した肺癌 (Poorly differentiated adenocarcinoma) の症例を経験した. 本症例はT
4症例のため Neoadjuvant chemotherapy を施行した後手術を行った. 我々が検索しえた本邦における同様の報告は本症例を含めて11例であった. このうち年齢・性別の記載のあった9症例に付いては年齢が36歳より57歳で, 平均年齢は49.1歳であった. 性別ではすべて男性であり, 比較的低年齢層の男性に発症している. 組織型では腺癌・未分化癌が多くみられた.
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長内 忍, 福沢 純, 秋葉 裕二, 石田 栄, 中野 均, 松本 博之, 小野寺 壮吉
1992 年 30 巻 2 号 p.
322-327
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例: 24歳, 女性. 急性上気道炎に対してミノサイクリン (MINO) の投与を受け, その後咳嗽, 呼吸困難, 血痰が出現し当科に入院した. 入院時の胸部X線写真では, 両側の胸水および肺門より広がる浸潤影を認め, 動脈血ガス分析では著明な低酸素血圧を呈していた. 入院後, MINOの投与を中止したところ, 自覚症状, 胸部X線写真所見, 呼吸不全は速やかに改善した. MINOによるリンパ球刺激試験は陰性であったが, 臨床経過および病理組織所見からMINOによる薬物性肺炎および胸膜炎と診断した.
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村田 尚彦, 高崎 雄司, 太田 保世, 山林 一, 岩崎 正之, 小川 純一, 井上 宏司, 正津 晃
1992 年 30 巻 2 号 p.
328-332
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は38歳, 男性で, 湿性咳嗽及び右前胸部痛を主訴として入院. 胸部X線上, 右肺上葉に空洞を伴う腫瘤影を認めたが, 血清腫瘍マーカーの上昇と発熱を伴っていたため, 肺癌及び肺膿瘍との鑑別を要した. 経気管支肺生検による確定診断を試みたが診断が得られず, 炎症所見の遷延があり, また空洞の縮小化が見られなかったので開胸ドレナージを実施した. この時, 粥状物質と毛髪を認めたことより奇形腫と診断したが, 肺野に見られた腫瘤に関しては, 胸部CT及びMRIの所見と, その後実施した腫瘤摘出時の手術所見から, 縦隔奇形腫が肺に穿破して腫瘤塊を形成したものと考えられた. 一方, 腫瘍マーカーの中のSLXに関して摘出標本をモノクローナル抗体を用いて組織学的に検索したところ, 奇形腫中に存在する膵組織から産生されていることが確認されたが, 奇形腫で血清中のSLX高値とその産生部位が確認されたのは本例が初例と考えられる.
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南方 良章, 小林 秀机, 新実 彰男, 杉田 孝和, 堀川 禎夫, 鈴木 雄二郎, 西山 秀樹, 前川 暢夫
1992 年 30 巻 2 号 p.
333-337
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
71歳男性. 日頃より夜間の激しい鼾と昼間の傾眠傾向を指摘されていた. 日中居眠りをし, 鼾の中断とともに心停止を生じ蘇生された. 睡眠時呼吸モニターにて閉塞型, 中枢型, 混合型の混在する睡眠時無呼吸症候群 (SAS) と診断したが, 呼吸不全や心不全は認めず, 臨床検査上も異常はみられなかった. 一般に心停止を生じるSASは, 過度の肥満や, 高血圧, 不整脈, 右心不全, 二次性多血症, 精神症状等の随伴症状を伴った症例である事が多い. しかし本例はそれらの症状を伴わず突然心停止を生じ, 鼾や昼間の傾眠傾向がある人に対する睡眠時の呼吸モニタリングによるスクリーニング検査の重要性が示された. 治療ではUPPP単独にて効果は不十分であったが, 側臥位睡眠との併用が有効であった. UPPPの有効率は50~60%とされており, 今後狭窄部位の的確な評価方法ならびにUPPPの正確な適応基準の確立が切望される.
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吉井 千春, 今井 純生, 干野 英明, 菅谷 文子, 水谷 保幸, 岩木 宏之, 榎本 克彦
1992 年 30 巻 2 号 p.
338-342
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は85歳の男性. 胸部X線写真上, 右中下肺野に巨大な腫瘤影を認め, 精査目的で入院となった. アスベストの暴露歴はない. 右側胸部からの経皮肺生検で二相型の悪性胸膜中皮腫と診断した. その後, 急速な胸水貯留を認めたため, 右胸腔内と腫瘍内に1本ずつトロッカーカテーテルを挿入し, 両ルートからCDDP, ADMの投与を試みた. 腫瘍内カテーテルに排出された腫瘍内容物の病理所見で悪性中皮腫に骨, 軟骨形成が認められた. これまで本邦では骨, 軟骨形成をみとめた悪性胸膜中皮腫の報告例はなく, 本例が第1例目と思われる.
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長谷川 幹, 多田 公英, 石井 昌生
1992 年 30 巻 2 号 p.
343-346
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
健常成人に発症した M. gordonae による肺感染症の1例を報告した. 患者は51歳男性で, 水道管配管業, 胸部X線異常のために入院した. 胸部X線では, 右肺尖部に浸潤影が認められ, 喀痰検査で5連検中3検体に100コロニーから1+の抗酸菌を証明した. この抗酸菌はナイアシンテスト陰性, 暗発色試験陽性, ツィーン80水解試験陽性, EB感受性などの結果から M. goadonae と同定された. INH, EB, RFPの3剤による治療で, 治療開始後2ヵ月目から排菌が停止し, 胸部X線上の浸潤影も改善した. M. gordonae は人体に対する病原性が最も弱いとされる抗酸菌の1つであり, 従来の本菌感染症の報告は, 免疫不全状態にある患者や, 結核の既往のある患者に発症した例が多い. 本症例は健常成人に発症したという点で極めて特異であり, 本菌の病原性に対する柔軟な対応の必要性を示唆するものである.
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堀江 史朗, 上條 与司昌, 今井 清泰, 小林 俊夫, 平井 一也, 早坂 宗治, 本田 孝行, 関口 守衛
1992 年 30 巻 2 号 p.
347-351
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は60歳, 男性. 自殺企図で約40mlのグラモキソンS
®を服用し, 服用1時間後来院した. 来院直後から胃洗浄, 腸洗浄にて腸管からのパラコート排出を行うとともに, 強制利尿, DHP (direct hemoperfusion) により血中のパラコート除去に努めた. また臓器障害予防のためメチルプレドニゾロン, ビタミンEを用いた. 第3病日から胸部X-PおよびCT上間質性変化が出現したが, 約1ヵ月後には画像上改善し, %VC, FEV
1.0%も正常域にあった. また, 血清中のSOD活性は入院直後から著しい低値を示した. これはフリーラジカルの産生に伴いSODが消費, 枯渇されることを示唆する所見を得た.
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井上 憲一, 永田 真, 保谷 功, 坂本 公也, 倉光 薫, 木内 英則, 坂本 芳雄, 山本 恵一郎, 土肥 豊
1992 年 30 巻 2 号 p.
352-357
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は77歳男性. 夜間の喘息発作のため当院某内科に入院した. ステロイドを含む治療により一旦は軽快したが, 胸部X線上の両側性かつ移動性の浸潤陰影が出現し, 各種抗生剤の投与によっても改善がみられず, 難治性肺炎の診断にて当科に転科となった. 喀痰より多量の
C. albicans が検出され, 本真菌に対する特異的IgE抗体ならびに沈降抗体がともに陽性であり,
C. albicans 抗原の百万倍希釈液にても即時型皮内反応が陽性であった. さらにBALF中にも
C. albicans が検出されたことなどからアレルギー性気管支肺カンジダ症 (allergic bronchopulmonary candidiasis) と診断した. Amphotericin B の吸入療法により, 肺浸潤陰影ならびに臨床症状の著明な改善が観察された. 本症についての症例報告は本邦では少数であり, また amphotericin B の吸入療法により症状の寛解が得られた点から興味深い症例と考えられた.
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木村 哲郎, 関野 一, 島田 一恵, 津田 善造, 平井 正志, 陳 和夫, 大井 元晴, 久野 健志
1992 年 30 巻 2 号 p.
358-362
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
慢性肺胞低換気・慢性呼吸不全の limb-girdle 型筋ジストロフィー症例に, 気管切開下IPPVによる夜間人工呼吸, 及び, 鼻周囲の顔面を型どりして樹脂成形した個人用マスク (custom molded mask) を使用した鼻マスクIPPVによる夜間人工呼吸を行い, 夜間低酸素血症の是正, 昼間の血液ガスの改善が得られ, 臨床経過の安定がもたらされた. 夜間人工呼吸開始前の昼間の室内気吸入での血液ガスはPaCO
2>70 Torr, PaO
2<50 Torrだったが, 夜間人工呼吸開始後は, 気管切開下IPPVでも個人用マスクによる鼻マスクIPPVでもPaCO
2<70 Torr, PaO
2>60 Torrが維持できた. 個人用マスクによる鼻マスクIPPVは本例では気管切開下IPPVに比して実用上遜色のない効果があり, 合併症のないこと, 快適さや受容され易さにおいて優れていると考えられた. 挿管下補助呼吸を試みる前に鼻マスクIPPVを試みる価値があるものと考える.
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関 英幸, 常田 育宏, 松木 香緒理, 西浦 洋一, 高橋 亘, 加藤 寿子, 川合 栄邦
1992 年 30 巻 2 号 p.
363-367
発行日: 1992/02/25
公開日: 2010/02/23
ジャーナル
フリー
症例は, 67歳の男性で, 胸部異常陰影の精査にて当科に入院した. 入院時の胸部写真上左S
1+2に直径3cmの腫瘤陰影が認められ, その周辺に微細な粒状影・線状影が認められた. 肺小細胞癌と診断し化学療法を施行したが, 経過中に高Ca血症, 上大静脈症候群を合併し死亡した. 剖検の結果, 原発巣の存在した左上葉にきわめて特異な石灰沈着が認められた. 沈着は, 気管支, 細気管支の上皮下・静脈の内膜・肺胞中隔にみられたが組織内には存在せず, 動脈系及びリンパ系にも存在しなかった. また石灰沈着は臨床的に高Ca血症が認められる前から存在したと推察されたこと, 石灰沈着の程度は, 腫瘍の周りほど高く, 離れるほど低くなっていたことから本症例の石灰沈着の機序は, ontogenic calcifiation で言われてる石灰沈着を引き起こす物質が腫瘍より産生され, それに静脈の鬱滞が関与して特異な部位に石灰の沈着を引き起こしたと推測された.
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