日本放射線技術学会雑誌
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原著
股関節単純X線撮影における卵巣の位置に基づく生殖腺防護について
柴田 隼 森 泰成
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2022 年 78 巻 1 号 p. 53-61

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抄録

【目的】生殖腺防護は,卵巣の位置や大きさに個人差があるため,遮蔽の際に体表からの位置が同定困難であり,防護用具が卵巣の位置に正しく配置されたか評価できない.そこで骨盤に対する卵巣の位置を明らかにし股関節正面,側面における生殖腺防護の有効性を評価した.【方法】MR装置で骨盤を撮影した画像から,卵巣の内縁と外縁,上縁,下縁,および骨盤の長軸と短軸,卵巣の深さを計測し,卵巣と骨盤との比に基づく卵巣の位置を算出した.骨盤のシェーマを作成し,卵巣の位置をシェーマの上に合成した.また,生殖腺防護用含鉛ゴムを使用した場合の遮蔽率を計算した.【結果】骨盤正面では卵巣は骨盤腔全体に存在していた.正面では遮蔽を左右大腿骨頭中心を結ぶ線まで尾側に配置することで,約88%遮蔽効果がある.側面では恥骨上肢から坐骨体へ遮蔽をすることで,非健側の卵巣の被ばくを99%低減することができる.しかし,生殖腺防護が上前腸骨棘を結ぶ線の高さでの配置の場合,左右の卵巣分布からの遮蔽率が13%程度となるため,防護具を使用するデメリットの方が大きくなる可能性がある.【結語】生殖腺防護は,防護具の形状による遮蔽率を指標として,防護具使用の有無を判断すべきである.

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