日本放射線技術学会雑誌
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局所のsize-specific dose estimates算出にmean CTDIvolの値を用いた場合に生じる臓器線量との相対誤差
田頭 豊 安部 圭亮小野寺 崇茅野 伸吾
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2023 年 79 巻 12 号 p. 1375-1384

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抄録

Size-specific dose estimates(SSDE)は,computed tomography(CT)検査における体型の違いを考慮した線量指標であり,これまでvolume CT dose index(CTDIvol)では得られなかった任意の断面のおおよその吸収線量が評価できるようになった.Automatic exposure control(AEC)を使用した場合,CTDIvolは体軸方向に変調された値をとるが,検査終了後に表示される値はスキャン全体の平均値mean CTDIvolであり,局所のSSDE計算にどちらの値を使用するかにより値が変わることが予想できる.本研究では,SSDE算出にmean CTDIvolを用いるか,スライスごとの変調値を用いるかの違いが,局所の臓器線量評価へ与える影響について人体ファントムを用いて検証した.American Association of Physicists in Medicine (AAPM) Report No.220の手順に従いwater equivalent diameterを計算するプログラムを作成し比較検討した結果,mean CTDIvolを用いて計算されたSSDE(local-SSDEmean)は,肺野領域においてCT撮影による被ばく線量を評価するWebシステム(WAZA-ARIv2)で算出される臓器線量より18%–56%の過大評価となった.これに対しCTDIvolの変調値を用いて計算されるlocal-SSDEmodulatedは,臓器線量を10%–13%の相対誤差で評価できた.また体軸方向全域のlocal-SSDEを平均した値SSDEは,CTDIvolにいずれの方式を採用された場合でも両者の間に有意差を認めなかった.CT画像のdigital imaging and communications in medicine(DICOM)ヘッダータグ(0018, 9345)にmean CTDIvolが格納され,スライスごとに変調されたCTDIvolの値が得られない場合は,計算される局所のSSDEは誤差を多く含有し撮影部位の臓器線量を正しく反映しない.その場合には,スキャン全体のSSDEの平均値SSDEに臓器ごとの係数を乗じて局所の臓器線量を評価する手法は使用可能である.

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