日本放射線技術学会雑誌
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79 巻, 12 号
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巻頭言
臨床技術
  • 大谷 昂, 石田 智一, 尾崎 公美, 高橋 昂己, 嶋田 真人, 木戸屋 栄次
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1337-1343
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/13
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,肝細胞がんと血管腫におけるdual energy CT(DECT)により得られた電子密度(electron density: ED)を比較し,肝細胞がんと血管腫の間のEDの診断性能を評価することである.【方法】2021年10月から2022年12月までに上腹部DECTを受け,肝細胞がんまたは血管腫と診断された患者46名(男性27名,女性19名,平均年齢65.7±14.0歳)を対象とした.病変部のEDと,背景の肝実質のEDで正規化した相対的ED(rED)を算出した.各群のEDとrEDを統計的に分析した.【結果】肝細胞がん群は血管腫群のED,rED(それぞれ43.7±4.1, 69.7±7.2)に比べ,ED(48.1±5.2),rED(80.0±7.3)ともに有意に高かった(p<0.01).また,rEDの曲線下面積はEDより大きかったが,有意差は認められなかった(p=0.153).【結語】EDは,肝細胞がんと血管腫の鑑別診断の一助となることが示唆された.

  • 藤原 誠, 汐月 剣志, 河野 実月, 納戸 大智, 丸山 健太, 宮崎 美咲
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1344-1351
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/25
    ジャーナル フリー

    【目的】胸腹部単純CT検査においてdeep learning reconstruction(DLR)を用いた小焦点撮影と逐次近似応用再構成(hybrid IR)を用いた小焦点および大焦点撮影の物理特性を比較する.【方法】DLRおよびhybrid IRによる小焦点撮影の管電流を350 mA, hybrid IRを用いた大焦点撮影では360, 400, 450, および500 mAと設定した.胸部単純CT検査を想定し,肺野および軟部条件を用いてデルリンおよびアクリルの50% task transfer function(TTF)値を算出し解像特性を比較した.腹部単純CT検査を想定し,軟部条件を用いてCT値差10 HUの7 mmのモジュールに対する低コントラスト検出能(CNRLO)を算出しノイズ特性を比較した.【結果】デルリンおよびアクリルのDLRを用いた小焦点撮影の50% TTF値は,hybrid IRを用いた小焦点および大焦点撮影と比較して最も優れた値を示した.DLRを用いた小焦点撮影のCNRLOはhybrid IRを用いた小焦点撮影より優れ,hybrid IRを用いた大焦点撮影の450, 500 mAと同等の値を示した.【結語】胸腹部単純CT検査においてDLRを用いた小焦点撮影は,hybrid IRを用いた小焦点および大焦点撮影と比較して解像特性に優れ,同等以上のノイズ特性を有することが示された.

  • 大久保 巧, 川﨑 康平, 原田 怜奈, 長渡 努, 松本 正信, 丸 繁勘
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1352-1358
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/11/15
    ジャーナル フリー

    心筋梗塞評価を目的としたMR遅延造影(LGE)検査は,異常–正常心筋および異常心筋–心内腔血液の二つのコントラストが求められる.しかしLGEでは異常心筋–心内腔血液コントラストが低く,内膜下梗塞の診断に苦慮することがある.本研究の目的は,心内腔血液と接する異常心筋の描出における造影T1mapの有用性を検証することである.2017年6月から18年5月までに当院で心筋梗塞評価のため造影MR検査を施行した患者48例を後方視的に対象とした.LGEと造影T1mapにおいて,異常心筋と心内腔血液のコントラスト比(CR)を求めて比較した.CRはLGEおよび造影T1mapで−0.04±0.11および0.02±0.04となり,有意に造影T1mapが高値であった(P<0.05).強調画像ではなくT1値の差をコントラストとする造影T1mapは,内膜下梗塞の評価において新たな情報を付加できることが示唆された.

資料
  • 勢川 博雄, 則兼 敬志, 三木 章弘, 井手 康裕, 山崎 達也, 森 裕一朗, 福家 優紀子
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1359-1369
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/27
    ジャーナル フリー

    肝区域を描出するためにcomputed tomography(CT)アプリケーション(CT肝臓体積測定)のVoronoi diagramを用いて,臨床データから肝区域をthree-dimensional(3D)画像として描出し患者説明や手術計画に利用されている.この肝区域はCouinaud(クイノー)がイラスト図で表した8つの亜区域と門脈および肝静脈との相互関係を用いている.肝臓は門脈と動脈の2重支配になっており太い門脈に細い動脈が“つた”のように絡む構造となっているため,クイノーは門脈の鋳型標本に基づいて肝を8つの区域としてsegment 1(S1)~segment 8(S8)に分けた.Voronoi diagramは門脈の支配領域を推定し肝臓をカラー表示で区域分割して3D画像およびmulti-planar reconstruction(MPR)画像を作成している.そこで,Voronoi diagramにより作成された3D画像およびMPR画像を利用して,肝臓正面のイラスト画像のみで説明されているクイノーの肝区域(S1~S8)を理解するためのサポートとして,クイノーの肝区域の3Dステレオカラー解剖図を作成し,多方向からの観察ができるようにした.更にVoronoi diagramで作成されたMPR画像からもMPRカラー解剖図を作成し,肝臓内の肝区域をカラーでaxial画像,coronal画像,sagittal画像の3方向から確認できるように作成した.また,本解剖図のデータは電子ファイル化し,電子媒体を通して放射線検査の場や在宅においても容易に利用できるツールとすることで,利用者からの要望等をもとに改善できるようにした.

  • 蝶野 大樹, 原田 耕平, 浅沼 治
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1370-1374
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/09/26
    ジャーナル フリー

    70歳代男性.去勢抵抗性前立腺がんで内分泌療法中.骨転移フォロー目的で骨シンチグラフィを撮影したところ,whole-body画像で偶発的心臓集積を認めた.放射線技師からの報告により泌尿器科主治医から循環器内科にコンサルトされ,心臓MRIのlate gadolinium enhancement(LGE)画像では心アミロイドーシスを疑う典型的所見を認めなかったが,ピロリン酸シンチグラフィで心臓集積を認め,心筋生検でtransthyretin amyloid(ATTR)心アミロイドーシスと確定診断された.骨シンチグラフィにおける偶発的心臓集積は特に高齢者において0.4%–2.0%程度の割合で存在すると報告されており,核医学検査の中で骨シンチグラフィが最も多く検査されているプロトコルであるため,診療放射線技師は見落としがないよう注意深く観察し,報告することでATTR心アミロイドーシスの診断につなげることが重要である.

  • 田頭 豊, 安部 圭亮, 小野寺 崇, 茅野 伸吾
    2023 年 79 巻 12 号 p. 1375-1384
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/20
    [早期公開] 公開日: 2023/10/26
    ジャーナル フリー

    Size-specific dose estimates(SSDE)は,computed tomography(CT)検査における体型の違いを考慮した線量指標であり,これまでvolume CT dose index(CTDIvol)では得られなかった任意の断面のおおよその吸収線量が評価できるようになった.Automatic exposure control(AEC)を使用した場合,CTDIvolは体軸方向に変調された値をとるが,検査終了後に表示される値はスキャン全体の平均値mean CTDIvolであり,局所のSSDE計算にどちらの値を使用するかにより値が変わることが予想できる.本研究では,SSDE算出にmean CTDIvolを用いるか,スライスごとの変調値を用いるかの違いが,局所の臓器線量評価へ与える影響について人体ファントムを用いて検証した.American Association of Physicists in Medicine (AAPM) Report No.220の手順に従いwater equivalent diameterを計算するプログラムを作成し比較検討した結果,mean CTDIvolを用いて計算されたSSDE(local-SSDEmean)は,肺野領域においてCT撮影による被ばく線量を評価するWebシステム(WAZA-ARIv2)で算出される臓器線量より18%–56%の過大評価となった.これに対しCTDIvolの変調値を用いて計算されるlocal-SSDEmodulatedは,臓器線量を10%–13%の相対誤差で評価できた.また体軸方向全域のlocal-SSDEを平均した値SSDEは,CTDIvolにいずれの方式を採用された場合でも両者の間に有意差を認めなかった.CT画像のdigital imaging and communications in medicine(DICOM)ヘッダータグ(0018, 9345)にmean CTDIvolが格納され,スライスごとに変調されたCTDIvolの値が得られない場合は,計算される局所のSSDEは誤差を多く含有し撮影部位の臓器線量を正しく反映しない.その場合には,スキャン全体のSSDEの平均値SSDEに臓器ごとの係数を乗じて局所の臓器線量を評価する手法は使用可能である.

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委員会報告
JIRAトピックス
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