論文ID: 2022-1154
【目的】現在,医療用X線CTの分野において使用されているSNRは線形システムにおける局所的な画質評価に活用されているものの,画像全体の総合的な画質評価指標として活用されていない.また,X線CTにおいてはSNRの計算に必要な信号パワーを求めるための原画像(無雑音画像)を直接得ることができないため,どの従来法を用いても正確にSNRを求めることは不可能である.このため,本論文では,原画像を得られない状況下においても画像全体を評価できるSNRの新たな求め方であるSNR*を提案する.【方法】まず,同一撮像条件で得た一対の観測画像(有雑音画像)の共分散から求めた信号パワーと差分から求めた雑音パワーを用いて,SNR の推定値であるSNR*を求める.次に,検証実験により推定値であるSNR*の誤差を検証し提案法の正確性を証明する.続く実証実験により,実際の観測画像へ適用したSNR*の挙動と精度を確認する.【結果】検証実験において推定値であるSNR*値の真値に対する相対誤差は0.06%以下を記録し,実践においてSNR*のCV値は0.015以下と安定した精度を得た.【結語】X線CT画像のように観測画像しか得られず原画像を得られない場合においても,提案法はSNR計測を実現する.