論文ID: 2024-1431
【目的】インシデントは,根本原因分析(RCA)によって分析することが推奨されている.われわれの施設においてもインシデントに対してRCAを実施し,再発防止策を立案し講じている.本研究の目的は,インシデントの再発防止のために,RCAによって分析された根本原因に対する再発防止策を講じ,その有効性を評価することである.【方法】治療計画用CT装置の更新後,寝台位置座標のゼロ調整を失念するインシデントが3カ月間に4回発生した.このインシデントに対して,RCAで根本原因を究明し,再発防止策を立案した.再発防止策の有効性を評価するために,再発防止効果を講じてからの1年間におけるインシデントの再発回数を収集し,χ2検定を用いてインシデントの発生確率について有意水準5%以下を有意としたときの有意差を求めた.【結果】インシデントの再発防止策は,寝台位置座標をゼロ調整したことのダブルチェックと,このダブルチェックを組み込んだ業務フロー図に沿った業務シミュレーションを行うことであった.これらの再発防止策を講じてからの1年間において,インシデントの再発回数は0回であり,その発生確率は統計学的に有意に減少した(p<0.05).【結語】インシデントの再発防止のために,ダブルチェックを周知し,業務フローに沿った業務シミュレーションを行うことは有効性の高い手法であることが示唆された.