日本臨床外科学会雑誌
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症例
巻絡により絞扼性イレウスを呈した虫垂粘液嚢腫の1例
花村 徹荒井 義和高田 学山口 敏之小松 信男橋本 晋一小山 正道
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2008 年 69 巻 1 号 p. 85-88

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抄録

虫垂粘液嚢腫(Mucocele)は虫垂内腔に粘液が貯留し,嚢腫状に腫大する疾患である.今回われわれはどこにも癒着がなく,虫垂粘液嚢腫が回腸に巻絡し,イレウスを呈した1例を経験したので報告する.
症例は94歳,女性,で腹痛を主訴に来院.腹部CTでイレウスと診断され,緊急開腹術が施行された.開腹したところ,虫垂先端に直径3cmの腫瘤がみられ,これが振り子の錘のごとく回腸末端付近の小腸に巻きつき血行障害をきたしていた.腫瘤は虫垂の先端にあり,虫垂内腔と非交通性でゼリー状物質を入れた嚢胞性病変で,病理組織学的には虫垂粘液嚢腫で悪性所見はなかった.
われわれが検索した限りでは虫垂粘液嚢腫が絞扼性イレウスを誘起した本邦報告例は本症例で16例目であり,稀で興味深い病態と考えられた.

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© 2008 日本臨床外科学会
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