2008 年 69 巻 1 号 p. 89-95
原発性虫垂癌の中でも非常に稀な低分化腺癌の1例を経験した.症例は57歳,男性.繰り返す腹部膨満と下痢を主訴に当院を受診した.精査の結果,回腸末端部狭窄によるイレウスと診断した.保存的治療を行ったが軽快せず,FDG-PET検査で陽性所見を呈したことから手術を施行した.術中所見で中間リンパ節(202番)の腫大を認めたが迅速組織診で癌の転移は認めず,回盲部切除術を施行した.病理学的検査で非充実型の虫垂原発低分化腺癌であった.深達度はSSで,リンパ節に転移を認めずStageIIであった.原発性虫垂癌は術前診断が非常に困難である.これまで原発性虫垂癌のFDG-PET所見についての本邦報告例はなく,colonic typeの虫垂癌では有用な検査の一つに成り得ると考えられた.