日本臨床外科学会雑誌
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症例
虚血性腸炎により小腸狭窄をきたした1例
鵜瀞 条瀧田 尚仁鈴木 義真塩崎 哲三玉崎 秀次鶴丸 昌彦
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2008 年 69 巻 2 号 p. 385-389

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抄録

虚血性腸疾患は基礎疾患を有する高齢者に多く,中でも虚血性小腸炎は稀である.今回われわれは基礎疾患のない若年男性で,虚血性小腸炎による腸閉塞の1例を経験したので報告する.症例は32歳,男性.既往はアトピー性皮膚炎のみで手術歴はない.約10年前から時々腹部膨満感を自覚しており,1年前他院で腸閉塞の診断で保存的治療を受けた.平成18年3月,腹部膨満感を主訴に当科受診.腹部単純写真ではニボーを伴う小腸ガス像を認めた.腹部CT検査で左下腹部に造影効果を伴う腫瘤と,これに連続した小腸の拡張像を認めたため,小腸腫瘍を強く疑った.小腸造影ではTreitz靱帯より約200cmの小腸に約4cmの全周性の狭窄を認めた.血管造影,下部消化管検査ではいずれも異常はみられず,小腸狭窄の診断で手術を施行した.開腹所見では小腸に4箇所の狭窄部を認め,小腸部分切除を行った.切除標本の病理組織学的検査では,肉芽腫や全層性細胞浸潤などのCrohn病を思わせる所見はなく,菲薄化した粘膜と,粘膜下層の強い線維増生と肥厚がみられる虚血性腸炎の所見であった.

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© 2008 日本臨床外科学会
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