抄録
症例は51歳,男性.狭心症にて当院内科通院中であったが胸やけを自覚し,貧血も認められたため上部消化管内視鏡施行し,胃噴門部に全周性の3型の腫瘍病変を認め下部食道(門歯35cm)まで浸潤しさらに門歯25cmに粘膜下腫瘤様隆起を2個認めた.いずれの箇所も生検にてGroupV,adenocarcinoma,tub2であり,胸部上部食道まで壁内転移した噴門部胃癌にてTS-1とCDDPによる化学療法を行った.化療後の上部消化管内視鏡では食道と胃の病変はPRと診断され,本人と相談のうえ平成18年3月手術(胃全摘・食道亜全摘・胸骨前結腸再建・腸瘻造設)施行.術後経過は概ね良好で20病日に退院.現在外来にて化学療法施行中である.噴門部胃癌の食道浸潤の多くは下部食道であり,本例のように上部食道にまで広範囲に浸潤した例はきわめて稀である.本症例は術前の画像診断で悪性度の高いことが予想され化学療法を行った後手術を行った.今後は化学療法を可及的に行いつつ注意深い経過の観察が必要である.