2010 年 71 巻 2 号 p. 388-393
胃壁外に発育し,膵浸潤がみられたため膵嚢胞腺癌と鑑別困難だった胃GIST症例を経験したので報告する.症例は82歳,女性,腹痛,嘔吐を主訴に当院受診.腹部造影CTでは胃壁を背側から圧排し,嚢胞を伴った内部が不均一に造影される径10cmほどの腫瘤が膵尾部に見られたため入院となった.胃内視鏡では粘膜面に腫瘤による圧排所見のみを認めた.MRCPでは主膵管が腫瘤部で途絶していた.FDG-PETでは左上腹部の腫瘤にSUV max=16.2の集積を認めた.膵嚢胞腺癌と診断され手術施行.手術時の迅速病理で胃GISTの膵浸潤と診断された.胃局所切除,膵体尾部切除術を施行した.病理所見では胃の固有筋層から壁外性に発育した腫瘍で,膵臓を圧排し増大しており,一部で膵実質に浸潤していた.免疫染色では,腫瘍細胞はCD34とc-kitが陽性で,核分裂数は10/HPF以上みられ,胃の固有筋層由来の高悪性度のGISTと診断された.術後14カ月を経過し,再発兆候なく外来通院中である.