2010 年 71 巻 3 号 p. 718-721
症例は6歳,男児.急性虫垂炎に伴う汎発性腹膜炎と診断して緊急手術を施行したところ,虫垂に炎症所見はなく,回腸末端から15mm口側で小腸の腸間膜付着部が穿孔しており,回盲部切除術を施行した.切除標本を検索すると回腸の腸間膜付着部に径10mm大の嚢胞状病変があり,これが穿孔していた.嚢胞状病変は径2mmの小孔を介して回腸と交通していた.病理組織学的検査所見では,嚢胞状病変の内面は小腸粘膜で覆われ,壁には平滑筋層が存在し,正常の回腸と同様の構造を呈していたため重複腸管症と診断した.重複腸管症は比較的稀な疾患であり,穿孔の本邦報告例は17例のみである.