日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
中心壊死と広汎な腹膜播種を有する肉腫様肝細胞癌の1例
田中 貴之川下 雄丈岩田 亨川原 大輔宮原 晋一兼松 隆之
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 71 巻 3 号 p. 801-806

詳細
抄録

症例は61歳,男性.慢性心不全の加療中に肝S4/5/8を占拠する腫瘍と総胆管結石を指摘され当科紹介.肝予備能は低下していたが,手術施行.腫瘍は肝表面から突出し広汎な腫瘍結節,腹膜播種を認め,手術不能と判断し総胆管結石載石と肝腫瘍部と正常部より生検を行い閉腹.病理結果で,腫瘍は大型の異型核を持つ腫瘍細胞が特定の配列を示さず増殖.銀染色で細網線維が少数の腫瘍細胞を取り囲み,腫瘍細胞の短い索状配列や腔形成.免疫組織学的所見にて肉腫に特異性の高いVimentin(VM)陽性,上皮性マーカーのCytokeratinAE1/AE3陽性,一方肝細胞系統のマーカーのAFP微弱陽性,CD10陽性,Hepatocyte antigen陰性であり,sarcomatoid hepatocellular carcinomaと診断.その後,TAE施行するも,診断確定後約4カ月で永眠された.本症例のごとく中心壊死を有する肝腫瘍の鑑別としてsarcomatoid HCCの存在を念頭に置く必要があり,その悪性度の高さから,迅速に治療を考慮する必要がある.

著者関連情報
© 2010 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top