2011 年 72 巻 2 号 p. 434-437
直腸癌が主病巣から9cm離れた肛門管に再発をきたした症例を経験したので報告する.症例は74歳の男性.直腸癌にて腹腔鏡補助下ハルトマン手術を施行した半年後に,肛門出血を主訴に来院した.肛門管の歯状線直上前壁に12mm大の1型腫瘍を認め,生検にて腺癌と判明した.直腸癌術後局所再発と診断し,残存直腸と肛門を切除した.組織学的には,粘膜下層を主座とする腺癌病変であり,周囲の扁平上皮には異型は認めず,初回手術病変からの転移であると考えられた.原因として腫瘍細胞のimplantationあるいは壁内転移などが考えられたが,いずれにせよまれな症例と考えられた.今後の慎重な経過観察が必要であると考える.